2015 Fiscal Year Research-status Report
グラウンドアンカー工のセンサー機能を利用したのり面安定評価システムの開発
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26450341
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
酒井 俊典 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90215591)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グラウンドアンカー工 / 維持管理 / SAAMシステム / 残存引張り力 / 荷重 / 温度 / 相関 / 地すべり |
Outline of Annual Research Achievements |
グラウンドアンカー工(以下,アンカー)は,のり面に施工されたアンカー全体で導入された緊張力を作用させ,のり面の安定を面的に保持する機構を有している。このため,アンカーに作用する緊張力は背面地山の影響を受けて変化し,個々のアンカーは背面地山状況を反映するいわゆるセンサーとしての機能を有していると考えられる。本研究では,現在まで考慮されなかったアンカーがセンサーとしての機能を有することを利用し,アンカー荷重変化ならびにアンカー荷重と温度との相関関係を用いた,新たなのり面の安定性評価手法の開発を行なうものである。 平成27年度は,調査を継続している地すべりにより変状が見られるアンカーが施工されたのり面(アンカーのり面)に加え,変状が見られず健全な状態のアンカーのり面の2地点を対象に,アンカーに荷重計および温度計を設置し,アンカー荷重変化およびアンカー荷重と温度との相関関係について検討を行った。その結果,変状のみられるアンカーのり面においては,大きな降雨後にアンカー荷重が増加するとともにアンカー荷重と温度との相関が大きく低下し,これらの結果を基にのり面状況を把握出来ることが明らかとなった。また,荷重計および温度計を設置した4箇所のアンカーを対象に,アンカー荷重変化ならびに両者の相関変化について比較検討した結果, 3次元的なのり面変状を評価出来る可能性が明らかとなった。次に,変状の見られないアンカーのり面においては,アンカー荷重と温度との相関が高い値で推移するものの,冬期の積雪等が見られる時期においては,両者の相関を評価する期間の温度差が5℃を下回ると相関値が大きく低下し,のり面の安定性の評価を相関によって行う場合,温度差を考慮することが必要であることが明らかとなった。また,両者の相関を評価する場合には,温度計を直接荷重計に設置することでより高い相関を得られることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,平成26年度から継続観測を行っている地すべり活動による変状が確認されるのり面を対象とした検討を行った。調査地点は3段ののり面にアンカーが施工され,のり面中央から南側の領域が過緊張となっていることが判っている。既設アンカーへの荷重計および温度計の設置は,26年度に設置した3段のり面上段中央付近に加え,3次元的なのり面変状の状況を判断するため,中段,下段の中央付近および下段端部の3箇所に設置を行った。その結果,中央付近のアンカーは,大きな降雨により3段のり面とも同時に荷重増加が見られるとともに,アンカー荷重と温度との相関が大きく低下し,アンカーがセンサーとしての機能を有し,のり面の変状を把握出来ることが明らかとなった。また,下段端部のアンカーにおいては,アンカー荷重と温度との相関が低く,この原因として,地すべりブロック位置が想定より南側に大きく広がり,端部ではすべり面が深い位置にあるためアンカー長が不足している可能性が考えられた。以上より,アンカー荷重変化およびアンカー荷重と温度との相関関係の結果を基に,ブロックの奥行きを考慮した地すべりの3次元的な挙動の評価が行える可能性が示された。次に,のり面に変状が見られず安定しているのり面を対象に,既設アンカーに荷重計と温度計を設置し,アンカー荷重と温度との関係について検討を行った。その結果,両者の相関は高い値で推移するものの,冬期の積雪期に温度差が5℃を下回ると両者の相関が大きく低下することが認められた。このため,アンカー荷重と温度との相関によりのり面の安定性評価を行う場合,気温差の影響を考慮する必要があることが明らかとなった。また,両者の相関を適切に評価する上で,温度測定を行う温度計を荷重計に直接設置することでより高い相関が得られることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年から調査を実施しているアンカーが施工されているものの変状の見られるのり面を対象とした観測を継続し,アンカー荷重変化およびアンカー荷重と温度との相関変化から,3次元的な地すべり挙動の評価を行う手法の提案を行う。ところで,アンカーは防錆対策が考慮された新タイプアンカーと,これを考慮していない旧タイプアンカーに区別される。平成27度までの研究では,新タイプアンカーを対象に評価・検討を行ってきた。しかし,旧タイプアンカーは十分な防錆対策が施されていないため劣化の進行が見られるものが存在し,その健全性を適切に評価する手法を提案することが求められている。このため,平成28年度は,劣化の可能性が考えられる旧タイプアンカーを対象に,アンカー緊張力の面的調査を行うとともに,この結果を基に既設アンカーに荷重計および温度計を設置し,アンカー荷重変化およびアンカー荷重と温度との相関について検討を行い,旧タイプアンカーにおける健全性評価手法の提案を行う。 加えて,最終年度の平成28年度には,3年間実施してきた変状が見られるのり面に施工されたアンカー,変状の見られないのり面に施工されたアンカー,および旧タイプアンカーが施工されたのり面に施工されたアンカーを対象に成果のとりまとめを行い,アンカー荷重変化およびアンカー荷重と温度との相関を基にした,新たなアンカーのり面の維持管理手法についての提案を行う。
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Research Products
(2 results)