2014 Fiscal Year Research-status Report
ガスヒートポンプを活用した効率的なハウス内環境制御技術の構築
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26450355
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
宮内 樹代史 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (80253342)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ガスヒートポンプ / GHP / 炭酸ガス施用 / 施設園芸 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭酸ガス施用は、施設園芸において生産性向上の方策として旧来より行われているが、ハウス内環境に対応した効率的な施用は行われていない。また、環境負荷軽減の面からは、施設園芸からのCO2排出削減が求められている。そこで、本研究では中小規模施設園芸におけるコスト削減、環境負荷軽減、生産性向上を目的として、ガスヒートポンプ(GHP)を活用した効率的な炭酸ガス施用システムの構築を検討した。すなわち、GHPをハウス冷暖房に活用するとともに、運転時の排ガスを炭酸ガス施用に利用するシステムを構築し、栽培作物の生育・収量の向上を図る。そのために、初年度は以下の点について検討を行った。 1)GHPによるハウス冷暖房特性の解明:GHPによる冬季昼間の冷房、夜間の暖房時のハウス内外環境特性、エネルギーコストについて検討した。その結果、暖房時のエネルギーコストにおいての優位性が明らかとなった。 2)半閉鎖環境の創出・維持条件の解明:冬季晴天日昼間のハウス内環境温度を20℃に設定した場合、換気窓を開けず半閉鎖環境を延長できる時間は90分程度であった。 3)排ガス循環利用システムの構築と炭酸ガス施用効果の検証:GHP運転時の排ガスをハウス内に循環させるために、排ガスの成分を分析したが、特に有害なガスを検出することはなかった。また、夜間の炭酸ガス濃度を2000ppmに維持したところ、ハウス内の栽培作物に大きな影響はなかった。 以上の結果から、GHPを用いた炭酸ガス施用手法の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した3つの項目についてひと通りの成果を得た。しかし、各項目それぞれにおいて補足事項があるため、2年目以降の検討事項に加える。その概要は以下の通りである。 1)GHPによるハウス冷暖房特性の解明:暖房時のエネルギーコストは概ね明らかとなったが、冷房時については次項の半閉鎖環境の維持時間と併せて検討する必要がある。 2)半閉鎖環境の創出・維持条件の解明:午前中に半閉鎖環境を維持するのは比較的容易であるが、光合成効率の増加が期待できる午後の時間帯に半閉鎖環境を創出する手法を検討する。 3)排ガス循環利用システムの構築と炭酸ガス施用効果の検証:排ガス循環の方法をシステム化するとともに、栽培作物への効果をさらに詳しく検証する。
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Strategy for Future Research Activity |
前項で述べた補足事項に加え、下記の2点について検討する。 1)排ガス循環システムの運用方法の検討:作物栽培時の炭酸ガス施用モデルとして、施設内のCO2濃度を午前の換気開始まで1,000ppm、換気開始後600ppm、午後は400ppmを維持することを検討する。これにより、無施用に比べての終了増加が期待される。これらを詳細に検討するため、計測したハウス内CO2濃度の時間的変化を基に、最適な炭酸ガス施用のスケジューリングを行う。 2)炭酸ガス施用効果の検証:構築したGHP排ガス循環システムを用い、炭酸ガス施用を行った場合の効果について検証する。前述した大学構内の2棟のハウスにおいて作物栽培を行い、慣行法(炭酸ガス施用なし)と検討した施用スケジューリングにより炭酸ガス施用を行った場合の比較を行う。計測項目は、ハウス内外気象環境要素の他、生育(主枝長、主節間長、葉面積)、開花様相(開花数、着果数、着果率)、収量(収穫果数、果重、可販果収量、収穫所要日数)等である。これらの比較から、GHP排ガス循環システムの優位性を明らかにする。また、最終年度には実用規模ハウスでの実証も考慮し、実用機の導入は困難としても、提案した炭酸ガス施用スケジューリングによる施用を行い、増収効果を検証する予定である。 以上のことを総合的に検討し、最終的に中小規模施設園芸農家に導入し得る技術となるか評価を行う。
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