2014 Fiscal Year Research-status Report
家禽の破卵および脚弱を制御するリン代謝調節機構の解明
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26450374
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
杉山 稔恵 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10272858)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニワトリ / リン代謝 / ナトリウム/リン酸共輸送体 / 産卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では、以下の研究成果が得られた。 1.産卵鶏におけるナトリウム/リン酸共輸送体サブタイプ(NaPi-IIaおよびNaPi-IIb)の遺伝子発現 リアルタイムPCRにより、産卵鶏の腸管、腎臓、卵管および骨髄骨におけるNaPi-IIサブタイム遺伝子の相対的発現量を検討したところ、NaPi-IIaは腎臓でのみ発現していることが示された。一方、NaPi-IIbは、腸管、骨髄骨ならびに卵管で発現がみられ、とりわけ、十二指腸(相対値1.00)で最も高く、卵管卵殻腺部(0.48)、卵管卵白分泌部(0.44)、卵管峡部(0.32)、空腸(0.32)でも比較的高い発現量を示した。骨髄骨(0.03)、回腸(0.001)、直結腸(0.001)では、わずかな発現量を示すにすぎなかった。このことより、NaPi-IIaは主に腎臓でのリンの再吸収に関与していることが示唆された。また、NaPi-IIbは腸管でのリンの吸収(能動輸送)に関与しており、とりわけ十二指腸ならびに空腸でリンの吸収が行われていることが示唆された。卵管でもNaPi-IIbが高発現していることが示され、卵殻形成にリン吸収もしくは排出が何らかの関与をしていることが考えられた。 2.成長に伴うNaPi-IIサブタイプの遺伝子発現 10日齢の未成熟産卵鶏と産卵鶏の腸管および腎臓におけるNaPi-IIサブタイプ遺伝子の相対的発現量を比較したところ、産卵鶏の腎臓でNaPi-IIa遺伝子発現量が3.39倍に増加していた。また、NaPi-IIbは十二指腸で1.80倍、空腸で6.94倍増加していた。このことより、鶏は産卵の開始に伴い腎臓でのリンの再吸収が増加するとともに、十二指腸ならびに空腸でリンの吸収が増加することが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の養鶏産業においては、ブロイラーでは起立不能となる脚弱、産卵鶏では卵殻の薄化による破卵が頻発し、多大な経済的損失を被っている。これらは骨疾患であり、また、卵殻のカルシウム供給源は骨であることから、カルシウム代謝はもちろんこと、骨の主成分であるリンの代謝も深くその原因に関わっていることが推測される。 家禽におけるリン代謝を解明する上で、腸管ならびに腎臓でのリン吸収能の動態を明らかにすることは重要である。本研究では、リン吸収能を示す指標として、NaPi-IIサブタイプに着目し、各器官での発現の有無と相対的発現量を検討した。その結果、腎臓ではNaPi-IIaが、腸管ではNaPi-IIbが発現しており、リンの再吸収と吸収に関与していることが明らかとなった。また、哺乳類とは異なり、腸管では十二指腸で最もリン吸収が行われていることを示した。さらに、これらの吸収は産卵の開始と共に増加することを明らかにし、産卵鶏におけるリン代謝の一端を明らかにした。本研究で用いた手法や結果は、破卵や脚弱とリン代謝との関連を明らかにする上で重要な知見である。しかしながら、NaPi-IIサブタイプの発現に関しては、遺伝子解析による相対的発現量のみの検討でであり、今後、機能性タンパク質としての発現を検討するすべきと考える。また、NaPi-IIサブタイプの局在を抗体あるいはin situ hybridaizationで明らかにし、ホルモンなどの調節因子との関連を明らかにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度で得られた結果を基礎とし、平成27年度以降では、(1)産卵鶏の加齢に伴うリン代謝の動態を検討し、卵殻質とリン代謝との関連を明らかにする。また、(2)飼料中のリン/カルシウム濃度を変化させて給与し、リン代謝とカルシウム代謝の相互関係を明らかにする。加えて、(3)リン代謝を調節する機構を明らかにすることを目的とし、エストロジェン、ビタミンD、FGF23(Fibroblast Growth Factor; 線維芽細胞増殖因子)などのホルモンに着目し、それらの動態と標的組織・細胞を明らかにする。 本研究は、リアルタイムPCRによる遺伝子発現を検討することで行うが、ウェスタンブロット法や免疫組織化学的手法を用いて、タンパク質レベルでの解析を同時に進める。
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Causes of Carryover |
業者からの物品(試薬)の納入が遅延したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画の遂行のため、物品費(試薬)として次年度に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)