2015 Fiscal Year Research-status Report
肉用家畜応用を視野に入れたバイオマーカー探索とモデル動物解析法の樹立
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26450391
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 真子 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80452746)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Sema3A / Pax7 / Myf5 / MyoD / emerin |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は筋肉培養細胞系を用いて、有用な家畜の創出のためのバイオマーカーの候補としてPaired Box 7とSemaphorin 3A (Sema 3A)に着目して解析を行っている。これまでに、Sema3A は筋肉サテライト細胞(筋幹細胞)の分化時に発現が上昇することが明らかにされている。しかし、その役割は未だ不明な点が多い。Pax7は筋サテライト細胞の静止状態で発現し、筋細胞が分化、融合し筋管を形成するにつれ発現が減少する。この2つの遺伝子の関係性はこれまで報告されていない。そこで増殖培地で培養した筋芽細胞にSema3A siRNA導入実験を行い、Sema3AがPax7発現に与える影響を検証したところ、Sema3A siRNA区ではPax7の発現が減少していた。さらに、細胞を蛍光免疫染色法によりSema3A抗体、Pax7抗体にて染色したところ、Sema3Aの発現が阻害されている細胞では、Pax7の発現が認められなかった。ウエスタンブロッティング解析によりSema3Aの発現阻害は、Pax7のみならずMyf5の発現も抑制していることを明らかとした。そこで、この細胞の活性化率をBrdUにて測定したところ、Sema3A の発現抑制により、活性化率が優位に減少していた。以上のことから、Sema3AがPax7の発現を制御し筋芽細胞の活性化を制御していることを明らかとした。この細胞が分化能力を保持しているかを確かめるために、増殖培地培養中にsiRNAを導入し、その後分化培地に置き換え培養したところ、筋管形成にも影響を与えていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究概要でも示した通り、Pax7とSema3Aの筋芽細胞における細胞増殖時および分化時の関係性を明らかにした。この実験結果は論文にまとめ、FEBS Open Bio誌に発表した。Sema3A siRNA実験により、細胞増殖時にSema3Aを阻害するとPax7およびMyf5の発現が減少することがわかった。しかし、MyoDの発現には影響を与えなかった。この細胞を蛍光免疫染色方によりSema3A抗体および、Pax7抗体により染色したところ、Sema3Aの発現が阻害された細胞でPax7の発現が抑制されていた。この細胞の増殖能をBrdU染色法により確認したところ、Sema3Aの発現を阻害した細胞では増殖能が優位に減少していた。そこで、siRNA導入細胞が分化能力を保持しているかを確かめるために、分化培地に置き換えて培養した。その結果、Pax7、Myf5の発現は抑制されたままであった。MyoDにおいても分化誘導後の発現上昇が認められなかった。Myosin Heavy Chainにおいても分化による活性化は阻害されていた。この細胞をPax7とMyoD抗体を用いて染色したところ、Pax7とMyoDどちらも発現しない細胞が認められた。この細胞は細胞質が大きく、核も肥大していた。この細胞は筋管を形成せず、単核のままで存在していた。EDMD型の筋ジストロフィー原因遺伝子であるemerinは筋マーカーの発現制御と細胞活性化に関わっていることが知られている。増殖培地下でSema3Aを抑制するとemerinの発現は上昇した。一方、Sema3Aの発現プラスミドを用いて強制発現させるとemerinの発現は減少し、Pax7、Myf5の発現は上昇した。以上の結果より、Sema3AはPax7、Myf5の発現を制御し、その制御はemerinを介して行われている可能性を示唆する。
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Strategy for Future Research Activity |
Sema3A の抑制により、Pax7、MyoDが発現しない細胞が認められた。この細胞は細胞質が大きく、核も肥大している。Pax7のsiRNA実験も行ったところ、このような細胞形態は認められなかった。この細胞がどのような状態であるかを検証する。これらの細胞は老化様の形態に似通っていることから、細胞老化の可能性を検証する。いくつかの老化マーカーのRNA発現、タンパク質発現を検証する予定である。さらに、この核の肥大には核膜の構成タンパク質であるemerinの発現変化が認められている。Emerinの発現量や発現場所がこのような核の形態変化を引き起こしている可能性が考えられる。このことから、emerinの発現阻害実験を行い、核の大きさや細胞質の状態を免疫傾向染色により検証する。この細胞の筋分化マーカーについても確認する。長期的には、このPax7、MyoDが発現していない細胞の単離法を検討し、これらの細胞の発現プロファイリングを行う。この細胞を、Pax7のみ発現している細胞、MyoDのみ発現している細胞、Pax7とMyoDともに発現している細胞群と比較し、Sema3A阻害が筋芽細胞に与える影響を検証する。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Transmembrane proteoglycans syndecan-2, 4, receptor candidates for the impact of HGF and FGF2 on semaphorin 3A expression in early-differentiated myoblasts2015
Author(s)
Mai-Khoi Q. Do, Naomi Shimizu, Takahiro Suzuki, Hideaki Ohtsubo, Wataru Mizunoya, Mako Nakamura, Shoko Sawano, Mitsuhiro Furuse, Yoshihide Ikeuchi, Judy E. Anderson, Ryuichi Tatsumi
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Journal Title
Physiological Reports
Volume: 3
Pages: e12553
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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