2014 Fiscal Year Research-status Report
外来牧草の侵略性を抑制する種多様性と在来植物の遺伝子型の影響
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26450392
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
西脇 亜也 宮崎大学, 農学部, 教授 (60228244)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 外来牧草 / 種多様性 / 在来植物 / 遺伝子型 / 侵略性 / 頑強性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「外来牧草の侵略性を抑制する種多様性と在来植物の遺伝子型の影響」を、野外調査と野外実験によって解明することにより、高い種多様性草地が持つ安定性・頑強性を評価する試みである。 1. 都井岬における外来牧草の雑草化の進行状況の把握:宮崎県串間市都井岬の岬馬放牧地(国指定天然記念物)では外来牧草の雑草化が進行中であるので、毎月の調査を継続したところ、小松ヶ丘では雑草化が進行していたが2014年現在でも扇山では進行していなかった。 2.外来牧草の雑草化の要因解析:裸地に速やかに定着可能な在来植物種は外来牧草の侵入・優占に対する抵抗性の重要な要素であると考えられた。また、放牧馬の蹄傷によって生じた裸地への侵入・定着能力の高い在来植物の遺伝子型が発見され、これら匍匐性の高い新規な遺伝子型の植物は外来牧草の雑草化抑制に機能していると考えられた。都井岬で発見された匍匐性の高いコマツナギのITS領域のDNA塩基配列を外来系統を含む直立性の高いコマツナギ系統と比較したところ、数塩基程度の相違であり、遺伝的相違は少なかった。 3.大規模放牧実験:放牧家畜による蹄傷によって生じた裸地への植物の侵入・定着能力を評価するため、中国青海省においてヤクとヒツジの2家畜を用い、それぞれの放牧区の反復が3となる大規模放牧実験を開始した。放牧実験初年の2014年は、裸地形成と種多様性に及ぼす家畜の違いについて検討し、外来植物の侵入などによる草地の荒廃に対する高い種多様性草地が持つ安定性・頑強性の評価を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、1、都井岬における外来牧草の雑草化の進行状況の把握:宮崎県串間市都井岬の岬馬放牧地(国指定天然記念物)では外来牧草の雑草化が進行中であるので、毎月の調査を継続したところ、小松ヶ丘では雑草化が進行していたが現在でも扇山では進行していないことがさらに明らかとなった。 次に、2.外来牧草の雑草化の要因解析:放牧馬の蹄傷によって生じた裸地への侵入・定着能力の高い在来植物の遺伝子型が発見され、これら匍匐性の高い新規な遺伝子型の植物は外来牧草の雑草化抑制に機能していると考えられた。都井岬で発見された匍匐性の高いコマツナギのITS領域のDNA塩基配列について外来系統を含む直立性の高いコマツナギ系統と比較したところ、数塩基程度の相違であり、遺伝的相違は少ないことを日本草地学会で公表した。 最後に3.放牧家畜による蹄傷によって生じた裸地への植物の侵入・定着能力を評価するため、中国青海省においてヤクとヒツジの2家畜を用い、それぞれの放牧区の反復が3となる大規模放牧実験を開始した。放牧実験初年の2014年は、裸地形成と種多様性に及ぼす家畜の違いについて検討し、外来植物の侵入などによる草地の荒廃に対する高い種多様性草地が持つ安定性・頑強性の評価を開始したことを、日本草地学会で公表した。以上より、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1、都井岬における外来牧草の雑草化の進行状況の把握:宮崎県串間市都井岬の岬馬放牧地(国指定天然記念物)では外来牧草の雑草化が進行中であるので、今年で16年目となる毎月の調査を継続するが、その際、今年度から新たに、GPS自動記録機能を備えたデジタルカメラを用いた近接リモートセンシングによる外来牧草の雑草化について迅速に多数点測定可能な方法の検討を行う。 次に、2.外来牧草の雑草化の要因解析:放牧馬の蹄傷によって生じた裸地への侵入・定着能力の高い在来植物の遺伝子型のITS領域のDNA塩基配列を直立性の高い系統と比較・検討するとともに、データベース情報を用いて系統学的な位置を明らかにする。 最後に3.放牧家畜による蹄傷によって生じた裸地への植物の侵入・定着能力を評価するため、中国青海省においてヤクとヒツジの2家畜を用い、それぞれの放牧区の反復が3となる大規模放牧実験を2014年から開始したが、放牧実験2年目の2015年は、裸地形成と種多様性に及ぼす家畜の違いについて検討し、外来植物の侵入などによる草地の荒廃に対する高い種多様性草地が持つ安定性・頑強性の実証を進めたい。
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Research Products
(5 results)