2014 Fiscal Year Research-status Report
組換え酵素Rad51と癌抑制タンパク質BRCA2の結合の種間比較に基づく分子創薬
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26450400
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森松 正美 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (70241370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落合 和彦 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (30550488)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射線感受性 / DNA損傷修復 / 乳腺腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
イヌの乳腺腫瘍の発症機構について、遺伝性乳癌原因遺伝子BRCA2とDNA組換え酵素RAD51の結合に焦点をあてて、RAD51の構造とBRCA2のBRCリピート(RAD51結合モチーフ)への結合能との関係を解明し、結合阻害分子を設計して癌細胞の放射線感受性を上昇させること等を通じ、イヌを含めた各種動物における新規癌治療法開発の基礎研究基盤を構築することが本研究の目的である。 哺乳動物ツーハイブリッド法により、RAD51の動物種によって異なるアミノ酸がRAD51-RAD51あるいはBRCA2-RAD51の結合力を変化させることを確認した。タンパク質立体構造解析シミュレーションソフトUCSF-Chimeraを用い、RAD51のアミノ酸置換がBRCA2との結合部位またはRAD51自己会合体形成部位の立体構造におよぼす変化を検証した。連携研究者によりコムギ胚芽無細胞タンパク質合成法を用いて各種RAD51置換体の作製を行い、各種組換え体標品の量及び純度を確認した。これら置換体を検索する前段階として野生型RAD51を用い、ATP存在下で1本鎖相同DNAの鎖交換反応を起こさせ、その反応効率(2本鎖→1本鎖DNA量の割合)を電気泳動の移動を指標として評価する実験系、すなわちstrand exchange assayの構築を試みた。イヌBRCリピートの多型についてRAD51との結合に影響する多型の各犬種での保有率と腫瘍罹患率との関係を調べた。さらに放射線治療に影響することが知られているインターフェロンガンマがJAK及びNF-kBを介して転写制御因子Nfkbizの発現を誘導することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
哺乳動物ツーハイブリッド法により、RAD51の動物種によって異なるアミノ酸がRAD51-RAD51あるいはBRCA2-RAD51の結合力を変化させることを確認し、これを学会で報告したこと、及びイヌBRCリピートの多型についてRAD51との結合に影響する多型の各犬種での保有率と腫瘍罹患率との関係を調べ、これを論文に発表したことは評価に値する。しかし、RAD51の組換え能に関する研究については、組換え体RAD51の変異体標品が概ね準備できているものの、strand exchange assayの構築に難航して予定どおりに研究が進まなかった。これらを総合的に考えて概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
RAD51の組換え能に関する研究についてstrand exchange assayの条件を詳細に検討し、実験系を確立する必要がある。国内外で先行研究を報告している研究者に連絡をとるなどして、改善を図りたい。また、現状では組換え産物をエチジウムブロマイドで染色して検出しているが、蛍光色素やラジオアイソトープで標識した核酸を使用する実験も行っていきたい。これを確立しつつ、RAD51のアミノ酸置換がBRCA2との結合に与える影響のin silico解析、及びRAD51欠損細胞に変異RAD51を導入して細胞内における相同組換え効率を測定する実験も行って行きたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用予定額が生じた状況として、物品費、旅費、人件費・謝金、その他のいずれの費目でも予定していた額を下回る結果となった。「物品費」に関しては、研究代表者が研究機関内で異動した際に、購入予定だった炭酸ガスインキュベータが移動先に設置済であったことや、ふるい消耗品類で運べないと考えていたものを運ぶことができたこと等による。「旅費」は支出しなかったが、これは学会のために分担者が北海道大学を訪問する機会があり、当初予定していた研究打合せをその際に行うことができたことや、インターネットを介した電話会議の機会を頻繁に持ったことによる節約の結果である。「人件費・謝金」については、英文校閲謝礼でなく校閲会社に「その他」として支払ったこと等による。「その他」については論文投稿料の支払が次年度となるために生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額のうち、今年度に支払うことができなかった投稿料を「その他」としてまず支払い、残りのすべてを「物品費」にあてたいと考えている。物品費にあてる理由は、本報告書で前述したとおり、strand exchange assayの実験が予定よりも遅れており、これに当初に計画していたよりも多くの支出が見込まれることによる。他の費目については、当初の計画どおりにしたいと考えている。
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Research Products
(3 results)