2014 Fiscal Year Research-status Report
旋毛虫感染による宿主の即時型アレルギー抑制機構の解明
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26450401
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
長野 功 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40283296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 洋一 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10294670)
鎌足 雄司 岐阜大学, 学内共同利用施設等, 助教 (70342772)
呉 志良 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90313874)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 旋毛虫 / 即時型アレルギー / 免疫抑制 / 分泌タンパク質 / 高次構造解析 / サイトカイン / 組換えタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
旋毛虫感染による即時型アレルギー反応に対する免疫抑制機構の解析と免疫抑制に関与すると考えられる53kDa旋毛虫分泌タンパク質(Tp53)の構造生物学的解析の二面から検討を行った。 免疫抑制機構の解析では、まず旋毛虫感染によってアレルギー反応の抑制が起きるのかを観察した。卵白アルブミン(OVA)感作による能動型皮膚アナフィラキシー反応の測定を行った。 OVA抗原溶液をマウスの耳組織に皮下注射し、後にエバンスブルーを尾静脈に注射した。その後、両耳を切除し、耳組織に浸潤したエバンスブルーの定量を行い、アレルギー反応の程度を測定した。その結果、旋毛虫感染群ではOVA感作による能動型皮膚アナフィラキシー反応は低下した。また、OVA特異的IgE、IgG1a、IgG2b各免疫グロブリンは感染により低下し、各種サイトカインのうちIL-4の上昇とIL-17の低下が観察された。次に、小麦胚芽無細胞系でのTp53の組換えタンパク質の作製を行った。その後、スギ花粉から抽出した粗抗原に対するアレルギー反応が旋毛虫感染またはは組換えTp53投与によって抑制されるかを観察した。その結果、旋毛虫感染は花粉感作による好酸球、およびIgG2の増加を抑制した。一方、組換えTp53をマウスに投与した場合では好酸球およびリンパ球の低下が顕著であった。 構造生物学的解析ではTp53を低分子化して大腸菌で発現させて結晶化を試みた。組換えTp53タンパク質をトリプシンで部分消化を行うと、約22kDの部分が消化に抵抗性を示した。これは、この部分が強固な高次構造を取っているものと考えられる。次に、この22kDaタンパク質を精製し、N末端のアミノ酸配列を決定した。また、この部分のDNAを増幅させるようなPCRプライマーを設計し、PCR産物をベクターに組み込み、大腸菌で発現させて精製を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
即時型アレルギー反応に対する免疫抑制実験では旋毛虫をマウスに感染後、または53kDa旋毛虫分泌タンパク質(Tp53)を直接マウスに接種後に抗原を感作し、即時型アレルギーの発症が抑制されるかどうかを観察する。同時に処置マウスの血清中の各クラスの免疫グロブリン量、脾細胞またはマクロファージのサイトカイン産生量の解析を行う。以上により、旋毛虫感染、Tp53による即時型アレルギー反応の抑制機構を明らかにすることを目的とする。今年度は抗原として卵白アルブミン(OVA)を主に使用した解析を行った。また、スギ花粉においても、花粉から抽出した粗抗原を用い、感染または組換えTp53投与による免疫抑制効果実験を行い、検体採取等の動物実験を実施することができた。 一方、53kDaタンパク質の構造生物学的解析においては、Tp53を低分子化して大腸菌で発現させて結晶化を試み、X線での立体構造を解明し、Tp53と相互作用するタンパク質を探索することを目的としている。こうして得られた候補タンパク質は相互作用部位の同定を行い、さらに変異体の作製により相互作用部位を確定する。今年度においてはTp53の低分子化を行い、その組換えタンパク質の合成に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
即時型アレルギー反応に対する免疫抑制効果および解析実験では主にスギ花粉抗原を用いた実験を行う。花粉抗原はスギ花粉抽出粗抗原だけでなく、花粉の主要なアレルゲンであるCryj1とCryj2を大腸菌で組換えタンパク質として発現させて用いる。その後脾細胞の刺激によるTh1型(IL-2, IFN-γ)、Th2型(IL-4, IL-5, IL-10、IL-13)、およびTh17型(IL-17A)の各サイトカインの量を定量する。また、マクロファージが分泌するIL-1、IL-6, IL-12, IL-18および TNF-aの各サイトカインの量を定量する。一方、TLR4/MD2-CD14を発現するHEK293細胞を用い、Tp53を接種した場合のIL-8産生量の変化を観察する。また、転写因子NF-κBの活性の増強はアレルギーなどの免疫異常を引き起こす。HEK293細胞、株化培養マクロファージを用い、NF-κBの転写活性に対する53kDaタンパク質の影響をルシフェラーゼアッセイにより検討する。 Tp53の構造生物学的解析においては、低分子化したTp53の組換えタンパク質を用い、X線による三次構造決定 を行う。すなわち、タンパク質が正しい構造をとっているかどうかを一次元NMR法で確認し、円二色性分光法(CD)を用いて二次構造を調べる。その後、結晶化によるX線結晶構造解析法を用い三次構造を決定する。また、低分子化した分子量の小さなタンパク質の場合、NMR法による構造決定も可能であるため、NMR法も試みる。
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Causes of Carryover |
購入予定であったフリーザー(バイオメディカルフリーザー・パナソニック・MDF-437(1×@370千円))は今年度においては現有の物品で対応が可能であった。また、タンパク質の発現・精製用試薬・器具、免疫機能アッセイ用試薬・器具についても現有の試薬・器具の残品が若干あり、試薬・器具で20万円ほど購入額を抑えることが可能であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
免疫学的解析に必要な消耗品経費は、実験動物(マウス)購入費および飼育費、小麦胚芽無細胞系組換えタンパク質発現システム、タンパク質精製用試薬(濃縮用フィルター、アフィニティークロマトグラフィー用試薬・器具)、組織培養用試薬・器具、免疫グロブリン・サイトカインアッセイ用試薬・器具、およびフローサイトメトリー用試薬の購入費である。構造生物学的解析に必要な消耗品経費は、大腸菌による組換えタンパク質の発現・精製用試薬・器具の購入費である。また、X線結晶構造解析実験用として、結晶化スクリーニング用プレート等が必要である。また、旅費として、成果発表の学会旅費が必要である。
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Research Products
(2 results)