2015 Fiscal Year Research-status Report
臨床応用を目指した腫瘍胎児性アミノ酸トランスポーターの基礎的研究
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26450409
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
打出 毅 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20327456)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 獣医学 / 臨床 / 腫瘍 / アミノ酸トランスポーター / 犬 / 悪性黒色腫 / LAT1 / 阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
<本研究の目的> L-type-amino acid transporter 1 (LAT1) はアミノ酸トランスポーターの1つで、胎生期の細胞で発現し生命活動に必要な分枝アミノ酸や芳香族アミノ酸を細胞内へ供給する重要な役割を果たしている。最近では人の腫瘍においてLAT1の高発現が明らかにされ、所謂、oncofetal proteinの1つと考えられている。LAT1は活発な細胞活性を維持するために必要となるアミノ酸を腫瘍細胞に供給し、腫瘍細胞の増殖・維持に重要な役割を果たしていることから、LAT1は腫瘍治療のターゲット分子として注目されている。本研究では獣医学領域におけるLAT1の腫瘍治療ターゲット分子としての有用性について検討する。 平成27年度の研究実施計画は平成26年度に引き続き、LAT1 阻害薬の有効性を 1. 細胞株(in vitro)と 2. 実験動物(in vivo) で行うことである。 <本年度の研究成果> 1. <In vitro の実験系での研究成果> 犬悪性黒色腫由来細胞株(5株)についてLAT1の発現解析を行ったところ、すべての細胞株で蛋白およびmRNA レベルでLAT1の高発現が確認された。これらの細胞株のうち1細胞株を用いて、LAT1阻害薬(BCHおよびメルファラン)の効果を検討したところ、阻害薬は細胞の増殖性およびアミノ酸取り込み能を有意に抑制した。これらの結果から、LAT1阻害薬はLAT1が高発現する悪性黒色腫の治療に有効である可能性が示された。 2. <In vivo の実験系での研究成果> ヌードマウスに悪性黒色腫由来細胞株を定着させた後、抗がん剤とLAT1阻害薬の併用効果について、腫瘍塊の大きさと腫瘍の全身への広がりの観点から検討した。その結果、LAT1阻害薬併用は腫瘍の大きさと腫瘍の全身への広がりを相乗的に抑制した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、悪性黒色腫(検討済み)に加え、犬肥満細胞腫株化細胞においても 同様の in vitro および in vivo の検討を行う予定であったが、平成27年度 8月1日付で所属大学が変わり、研究環境のセットアップに時間を要した。犬肥満細胞腫株化細胞での検討は現在行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)In vitro(細胞株)および in vivo(ヌードマウス)におけるLAT1阻害薬の有用性の評価について LAT1阻害薬の前臨床研究として、種々の腫瘍に対する有効性を細胞株やヌードマウスを使った移植モデルで評価することは、有効腫瘍スペクトルを考える上でも重要である。従って、現在行っている評価法を基盤として、多くの種類の腫瘍細胞株を用いて継続実験を行う。現在検討中である犬肥満細胞腫株化細胞に加え犬血管肉腫株化細胞で検討を予定している。 (2)LAT1とエンドセリンの関連性について 予備実験にて、血管肉腫組織においてLAT1の高発現とエンドセリンの高発現が確認されている。エンドセリンの発現にはHif-1αの関与が明らかにされており、またLAT1発現にもHif-1αの関与が疑われている。LAT1およびエンドセリンは腫瘍の増殖に密接に関係していることから、両遺伝子の発現機構を解析し、両遺伝子発現を抑制する分子機構を明らかにすることは新規の治療ターゲット分子を絞る上で重要である(当初の研究目的の1つ)。 <エンドセリンの血管肉腫に対する増殖促進作用についての検証> 人の種々の腫瘍でエンドセリンは増殖因子として働いていることが明らかにされているが、犬血管肉腫における役割は不明である。遺伝子発現機構の解析を進める前段階として、エンドセリンの犬血管肉腫に対する役割(増殖に関与しているか?)をエンドセリン拮抗薬を使って検討する(予備実験では拮抗薬は増殖抑制効果を示す可能性が示唆されている)。 <共通の遺伝子発現調節機構の解明> Hif-1αを中心に検討を行う。
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Causes of Carryover |
所属大学の異動に伴い、実験環境の整備に時間がかかり実験の進捗が遅れたため残額が生じた。当初、悪性黒色腫細胞株、肥満細胞腫株、血管肉腫細胞株の3つの起源の異なる細胞株を用いて、細胞内へのアミノ酸取り込み実験、ヌードマウス移植モデルを使ったLAT1阻害薬の抗腫瘍効果解析実験を行う予定であったが、肥満細胞腫株および血管肉腫細胞株についての実験が終了していない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
肥満細胞腫株および血管肉腫細胞株についての実験を継続するとともに、血管肉腫細胞株を用いたLAT1とエンドセリンの発現機構上の関連性と、エンドセリンの増殖因子としての役割について解析を行う。次年度使用額は、これらの実験に使用する。具体的には 1)<In vitro での実験>肥満細胞腫株、血管肉腫細胞株について、発現解析、阻害薬を用いたアミノ酸取り込み阻害実験を行う。2)<In vitro での実験>ヌードマウス移植モデルを使って、阻害剤の効果を検討する。3)血管育種細胞株を用いて、エンドセリンの役割を検討する。
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[Journal Article] Epidermal growth factor receptor expression in canine transitional cell carcinoma.2015
Author(s)
Hanazono, K., Fukumoto, S., Kawamura, Y., Endo, Y., Kadosawa, T. Iwano, H. and Uchide, T.
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Journal Title
J. Vet. Med. Sci.
Volume: 77
Pages: 1-6
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Big endothelin-1 as a tumour marker for canine hemangiosarcoma.2015
Author(s)
Fukumoto, S., Miyasho, T., Hanazono, K., Saida, K., Kadosawa, T., Iwano, H. and Uchide, T.
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Journal Title
Vet. J.
Volume: 204
Pages: 269-274
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Clinical use of serum big endothelin-1 levels as a tumour marker for haemangiosarcoma2015
Author(s)
Fukumoto, S., Saida, K., Miyasho, T., Kadosawa, T., Iwano, H. and Uchide, T
Organizer
Fourteenth International Conference on Endothelin
Place of Presentation
Savannah, Georgia, USA
Year and Date
2015-09-02
Int'l Joint Research