2014 Fiscal Year Research-status Report
サイクロスポリンによるネコ伝染性腹膜炎ウイルスの複製阻害機構の解析
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26450413
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
田中 良和 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (50291159)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ウイルス感染症 / ネコ伝染性腹膜炎 / ウイルス複製 / 抗ウイルス剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネコ伝染性腹膜炎(FIP)は、現在、有効な治療法やワクチンがなく、発症すると致死的な経過をたどる。本研究は、FIPウイルス複製阻害作用を持つサイクロスポリンAと結合する細胞内シクロフィリン(Cyp)のFIPウイルス複製における機能的役割を解析し、ウイルス複製制御機構を明らかにすることを目的とする。 平成26年度は大腸菌を用いた発現系により、Cyp蛋白質の発現精製を行った。細胞内に多く存在するCypAおよびCypBを精製し、既にこれらの蛋白質と結合するという報告のあったウイルスN蛋白質との結合を検証した。しかし、プルダウン法による実験結果から両Cyp蛋白質とN蛋白質の結合は認められなかった。一方、細胞への強制発現系による共免疫沈降法で、実験条件によってはこれらの蛋白質は相互に結合した。 このため、細胞におけるCyp蛋白質のウイルス複製への影響を調べるため、FIPウイルスの複製効率に影響を及ぼすCypAおよびCypB遺伝子をゲノム編集法であるCRISPR/Cas9系を用いてfcwf-4細胞での遺伝子ノックアウトを試みた。ウェスタンブロット解析の結果として、各Cyp遺伝子について10種類以上の遺伝子ノックアウト細胞クローンを得ることに成功した。これらの細胞にFIPウイルスを感染させたのち、ウェスタンブロット法およびReal-time PCR法を用いてウイルス複製効率を解析した。結果として細胞クローンによって、ウイルス複製抑制効果の差が認められたが、CypAおよびCypB遺伝子ともにFIPウイルス増殖に多大な影響を与えることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸菌による発現系において、発現蛋白質が可溶化せず、精製に時間を要した。このため、数種の発現系を試み、結果としてCyp蛋白質の発現精製に成功した。また、プルダウンアッセイの結合条件の検討、およびノックダウン細胞のスクリーニングに時間を要したため、研究計画のすべてを計画通り遂行することが困難であった。 しかしながら、Cyp遺伝子のノックアウト細胞の樹立に成功し、これらを用いたウイルス増殖実験を行うことができたので、概ね実験計画が遂行できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度でシクロフィリン遺伝子のノックアウト細胞を樹立することができた。このため、病原性の異なるネココロナウイルスやFIP感染ネコに対するシクロフィリン治療後、再び増殖性を獲得したウイルス株をノックアウト細胞に感染させ、in vitroでの増殖性を解析する。同時にCRISPR/Cas9システムを利用してin vitro でのウイルスゲノムの改変を行い、リバースジェネティック系を用いて、各遺伝子に変異の入ったウイルスを作出することを試みる。これにより、病原性や複製に関わるウイルス遺伝子の同定を行う。また、細胞蛋白とウイルス蛋白との結合性をみるため、in vitro でのtwo-hybrid システムやTAP法を行い、複製に必要な細胞蛋白を同定する。
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Causes of Carryover |
当該年度に使用予定であった分子生物学的解析試薬の購入費が試薬販売会社のキャンペーン時に購入できたため、予想していた購入金額より実質低価格で購入できた。また、論文投稿時において、論文受諾に予想以上に時間を要したため、論文投稿料が次年度に繰り越す形となり、当該年度中に使用することができなかった。同時に他の受諾された論文1報の投稿費用が無料だったため、その経費を要しなかったため、当該助成金が翌年度分と合わせた形で繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の繰り越し分と今年度の経費を合わせ、引き続き、試薬の購入費が必要である。また、研究成果を公表するために英文校閲費用と論文投稿料が必要である。近年、雑誌がオープンジャーナル化し、投稿費用が以前より高くなる傾向にあり、申請した金額を試薬代金、論文掲載費用等に全額使用する必要性がある。
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Research Products
(6 results)