2015 Fiscal Year Research-status Report
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26450421
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
佐藤 れえ子 岩手大学, 農学部, 教授 (80142892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
御領 政信 岩手大学, 農学部, 教授 (80153774)
小林 沙織 岩手大学, 農学部, 助教 (60566214)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 常染色体優性多発性嚢胞腎 / 猫 / PKD1遺伝子 / バソプレシンV2受容体拮抗薬 / CFTR / ポリシスチン / 腎臓サイズ / ツーヒット |
Outline of Annual Research Achievements |
1.嚢胞ネットワークによるサンプルの収集(継続): 研究開始年度(平成26年度)より実施している嚢胞ネットワークによるサンプル収集を継続した。臨床例ならびに死亡症例からの腎臓の献体が増加した。死亡腎については、病理学的検査実施前に死後CT検査を実施し、腎容積と嚢胞の状態を記録した。なお。ホームページに猫の飼い主向け啓発資料を掲載し、それにより献体が増加した。 2.嚢胞腎の病態進行による腎臓サイズの変動: 分子標的薬による治療効果を判定するためのマーカーとして腎臓サイズに注目し、嚢胞腎症例と死亡腎に対する腎臓サイズの測定と、嚢胞体積の経時的変化を観察した。これに先立ち、健康猫ならびに慢性腎臓病猫の腎臓サイズについて計測し、嚢胞腎との比較を実施した。 3. 猫多発性嚢胞腎治療薬の選択と投与量の決定: 嚢胞細胞のcAMP活性を抑制するための方策としてバソプレシンV2受溶体に注目し、これの抑制薬である「トルバプタン」を治療薬として選択した。次にトルバプタンの投与量を決定するために、健康猫へのトルバプタン単回投与と長期投与を実施し、利尿効果が得られる投与量を決定し、長期投与による有害作用の有無についても観察した。 4.嚢胞細胞に対するCFTR抗体ならびにポリシスチン抗体による免疫化学染色: 提供された嚢胞腎の病理組織学的検索の後、嚢胞細胞におけるCFTRならびにポリシスチン蛋白の発現を検索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度に予定していたサンプル収集が順調であり、ホームページによる情報提供によって全国から嚢胞腎症例の検体が続いていることと、予定していた嚢胞細胞でのCFTRならびにポリシスチン蛋白発現について検索できたこと、また猫多発性嚢胞腎ではPKD1遺伝子の特定の同じ場所でツーヒット変異が起きていることを証明できたことが挙げられる。また、治療薬についても研究が進み、バソプレシンV"受容体拮抗薬を選択して、健康猫での単回投与と長期投与によるデータが集積でき、投与量の決定ができたことは、本研究の進展にとっての意義は大きく、これにより臨床例への投与が可能となったことが理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.臨床例に対するトルバプタン投与: トルバプタン投与前にあらかじめ半年間嚢胞腎の大きさを画像検査により観察し、腎機能検査を実施して投与前のデータを取得する。その後、27年度に決定した投与量に従い実施する。その際に低用量からトルバプタンを投与し、高ナトリウム血症や脱水、肝障害が出現しないかを慎重に観察する。 2.トルバプタン投与効果の判定: 臨床症状ならびに腎機能検査と尿検査を継続すると共に、腎臓サイズも測定し、投与前のデータと比較して嚢胞拡大の経時的変化を観察する。また、尿中バイオマーカーと尿の浸透圧についても観察する。 3.猫多発性嚢胞腎症例のPKD1遺伝子検査: PKD1exson29のホットスポット以外の変異がないかどうか、exson29以外の部位のダイレクトシークエンスを実施して検索する。 4.猫多発性嚢胞腎における嚢胞細胞増殖のメカニズムに対する考察と研究のまとめ: 3年間で得られた成果に基づき、猫多発性嚢胞腎発症のメカニズムと病態について考察してまとめる。これにより、猫多発性嚢胞腎がヒトの常染色体優性多発性嚢胞腎と同じ病態であるのか、また、そのモデルになり得るのかが明らかになる。それによって、トルバプタン以外の分子標的薬の候補を選ぶことも可能になると考えられる。
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Research Products
(10 results)