2015 Fiscal Year Research-status Report
MRLマウスの精巣内卵細胞を用いた哺乳動物の性分化機構解明と雄性単性生殖への挑戦
Project/Area Number |
26450439
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大塚 沙織 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 客員研究員 (10566152)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 性分化 / 精巣内卵細胞 / MRL/MpJマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
通常、哺乳動物の雌は卵巣内で卵のみを、雄は精巣内で精子のみを産生する。しかしながら、MRL/MpJマウスの雄は、胎子期から新生子期にかけて精巣内で卵細胞も産生する。本研究は精子しか産生しないはずの精巣が卵細胞を産生するメカニズムを明らかにし、哺乳動物における生殖腺、および生殖細胞の性分化機構を解明することを目的としている。これまでの研究から、MRL/MpJマウスの胎子精巣内では精巣頭尾側辺縁に位置する一部のXY始原生殖細胞が胎齢12.5-14.5日に減数分裂に移行して卵細胞へと分化することがわかっている。始原生殖細胞の性分化は周囲の生殖腺体細胞の性ならびに機能に依存することから、精巣内卵細胞産生と精巣あるいは卵巣の分化ならびに機能マーカーの発現の関係を検証した。 まず、減数分裂特異的遺伝子、Stra8にGFPを融合させた導入遺伝子を持ち、胎子期では卵細胞特異的にGFPを発現する遺伝子改変マウスの雌マウスとMRL/MpJ雄マウス間でF1マウスを作出した。このF1マウスはMRL/MpJマウスと同様に精巣内卵細胞を産生することを確認した。胎齢13.5日のF1マウスの精巣を精巣内卵細胞産生領域(GFP陽性精巣内卵細胞を含む辺縁部)と非産生領域(GFP陽性精巣内卵細胞を含まない中央部)に分離し、これらの領域の間で精巣の分化機能マーカー(Sox9, Fgf9, Cyp26b1)および卵巣の分化機能マーカー(Wnt4, Rspo1, Fst, Foxl2)の発現を比較した。結果、精巣内卵細胞産生領域ではSox9およびCyp26b1の発現が非産生領域より有意に低い一方で、卵巣の分化機能マーカーは有意に高かった。このことから、精巣内卵細胞の産生は、精巣頭尾側辺縁でみられた一部卵巣としての性質と関連する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば、精巣内卵細胞産生領域と非産生領域における遺伝子発現の差異をMRL/MpJマウスでも検証する予定であったが、自身の妊娠・出産により、研究に遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度行った精巣内卵細胞産生領域と非産生領域における遺伝子発現の差異をMRL/MpJマウスでも検証する。また、精巣内卵細胞産生の原因遺伝子があると推測されているマウス1番染色体0.00-2.46cM領域を精査し、精巣内卵細胞産生との関連を明らかにするとともに、コンジェニックマウスの作出に着手する。出産で遅れが出ている部分は研究連携者の協力を仰ぐ。
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Causes of Carryover |
自身の妊娠・出産により、研究ができない期間が生じたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用機器の高額消耗品が今年度末に使用不可能となったため、共同設備の購入費として使用する。また、出産直後ですぐに研究を開始できないため、研究連携者に実験の一部を依頼し、それに必要な消耗品等を購入する。
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