2014 Fiscal Year Research-status Report
脊髄アストロサイトのグリア伝達物質放出機構と細胞保護における役割の解明
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26450440
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
乙黒 兼一 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (40344494)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脊髄 / アストロサイト / 硫化水素 / アデノシン / シスタチオンβシンターゼ / 平衡ヌクレオチド輸送体 / ギャップジャンクションヘミチャネル / アデノシンキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄培養アストロサイトにおけるグリオトランスミッターの硫化水素(H2S)およびアデノシンの産生放出機構について検討を行った。まず脊髄における硫硫化水素産生酵素シスタチオンβシンターゼ(CBS)の発現を調べたところ、アストロサイトに局在して発現していることが示された。そこで培養アストロサイトを用いて検討したところ、分離直後のアストロサイトではCBS発現が認められH2S産生活性も高いが、培養日数に従いどちらも低下することが示された。この低下は膜透過性cAMP処置やニューロンとの共培養によって回復するため、cAMP経路を介したニューロンとの相互作用がアストロサイトのCBS発現とH2S産生活性の維持に重要であることが示唆された。 また、脊髄アストロサイトにはアデノシンキナーゼとアデノシンデアミナーゼが発現しており、両酵素の阻害薬によってアストロサイトからアデノシンが放出されることが示された。この放出反応は平衡ヌクレオシド輸送体(ENT)阻害薬で抑制されることから、ENTを介してアデノシンが放出されていることが示唆される。一方、細胞外Ca2+濃度の低下によっても細胞外アデノシンが増加することが示されたが、この場合はAPTが放出され、細胞外でアデノシンに分解されていることが明らかとなった。ATP放出経路としてギャップジャンクションヘミチャネルの関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要な目的であった、培養アストロサイトからの硫化水素、アデノシン放出反応の解析ができた。アストロサイトの環境変化による硫化水素産生活性の変化について明らかにし、投稿論文として発表することができた。さらに、アストロサイトのプリン代謝機構の変化によるアデノシン放出反応についても、新たな知見を得て、投稿論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アストロサイトの硫化水素産生活性に与えるニューロンの役割について、さらにその分子機構を明らかにする。またアストロサイトのアデノシン放出経路をさらに詳細に明らかにし、この反応がアストロサイトの活性化などによってどのような影響を受けるか検討する計画である。
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Causes of Carryover |
昨年度に受理された投稿論文の印刷費の支払い分が、次年度になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月中に印刷費の支払いが行われた。
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