2015 Fiscal Year Research-status Report
温度感受性TRPチャネルを介した乳汁分泌調節機序に関する研究
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26450441
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 謙 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30449003)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | TRPチャネル / 泌乳期 / 乳腺 / 乳分泌 / 乳腺胞上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳汁とは泌乳期の乳腺由来の分泌液である。この乳汁産生は温度変化に対して敏感であり、例えば牛乳を産する泌乳牛では、その体温変動に伴って乳質や乳量が変化することが知られている。また、外気温が27度を超える暑熱ストレス下においては、乳量低下、乳成分異常、体細胞数増加などの症状が認められる。一方、寒冷下では乳汁分泌能は低下し、ヒトの乳汁分泌過多症の対処療法として乳房の局所的冷却が行われている。これらのことから、乳腺には温度を感知するセンサーが存在し、その温度センサーが乳分泌能を制御していると考え、温度感受性受容体であるTRPチャネルについて調べた。 これまでの結果、泌乳期の乳腺にはTRPM2, TRPM4, TRPM8, TRPV4が発現していることがわかった。これらのTRPチャネルが感知する温度域は各々で異なっており、TRPM4およびTRPM8は体温より低い温度域で、TRPM2およびTRPV4は体温以上の温度域で活性化する。また、泌乳期乳腺におけるTRPM8とTRPV4の局在を調べたところ、どちらも乳汁分泌細胞である乳腺胞上皮細胞に発現していることがわかった。ウエスタンブロッティングの結果、培養した乳腺上皮細胞においてもTRPV4とTRPM8が発現していた。 続いて、in vitroにおいて乳汁分泌を誘導した乳腺上皮細胞を用いて、TRPM8とTRPV4のアゴニスト/アンタゴニストが及ぼす影響について調べた。その結果、TRPM8の不活性化は代表的な乳成分であるカゼインやblood-milkバリアを構成するクローディンの発現を調節することがわかった。また、培養温度や培地組成によっても、TRPM8のアゴニスト/アンタゴニストの作用は異なっており、乳腺上皮細胞の乳分泌能が温度によって高度に制御されていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度および平成27年度の研究が当初の計画通りに進行していることから、上記の区分に評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究が概ね当初の計画通りに進行し、平成27年度ではin vitro実験主体で研究を進めた。平成28年度は当初の計画にあるin vivo実験を中心に研究を行い、その進行状況次第で電気生理学的な評価やカゼイン以外の乳成分の解析実験を適宜追加し、研究を発展させる予定である。
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Causes of Carryover |
今回発生した3510円は、注文した実験用試薬の納入が2016年度内に間に合わなかった結果の金額です。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、購入予定であった実験用試薬を用いた実験を行うため、その購入費として使用します。
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Research Products
(5 results)