2014 Fiscal Year Research-status Report
栄養膜細胞のダイナミズムにおける膜結合型メタロプロテアーゼの細胞機能学的関与
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26450445
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
日下部 健 山口大学, 獣医学部, 准教授 (20319536)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ADAMDEC / 胎盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス妊娠子宮における膜結合型メタロプロテアーゼADAMDEC-1の基礎動態を調べた。胎盤においては胎盤迷路部の栄養膜合胞体細胞および胎子毛細血管に反応性が確認された。胎子においても、心臓と肝臓の原基にADAMDEC-1が発現している可能性が示唆された。栄養膜細胞と毛細血管については、妊娠初期~中期に胎盤の形成過程にADAMDEC-1が何らかの機能的関与をしていると予測された。胎子・胎盤におけるADAMDEC-1の分布パターンの確定的な検証とともに、機能的な研究を進める。 他の動物の胎盤においても、ADAMDEC-1のホモログが存在する可能性が示された。特にチンパンジー、ニホンザル、イヌなど、栄養膜細胞が浸潤するタイプの胎盤に共通してADAMDEC-1ホモログが発現すると考えられた。また、ブタ胎盤においてもADAMDEC-1ホモログが発現する可能性が示されたが、その意義は不明である。 補体抑制因子Crryに関して、マウス胎盤における基礎動態を調べた。特に妊娠初期の着床段階において、胚周囲の組織にCrryの陽性反応が確認された。着床期にCrryを発現している細胞としては栄養膜巨細胞と母体性脱落膜細胞が考えられた。他の動物の胎盤についてもCrryの発現を調べると、特にウマの胎盤でCrryホモログが存在している可能性が示唆された。Crryは補体系による胎子組織の侵襲を防ぎ、妊娠維持に関わることが知られているため、この結果は獣医学的に重要な所見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請段階の実験計画の3分の2程度は実施することが出来た。しかしながらADAMDEC-1検出ための実験系の確立が不十分であったため、局在検査に多くの時間を取られた。まだ不確定な結果もあるので、改善を試みている。 対処法として、抗体などの検出試薬の再選定、複数の検出方法の試行を行った。改良した検出法にからは好結果を得ており、良い方向に向かっている。ADAMDEC-1の基礎動態を確定し、機能実験に移行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ADAMDEC-1の発現細胞を確定のうえ、培養系において機能実験を行う。栄養膜細胞のモデルとして株化されている栄養膜幹細胞を、脱落膜細胞に対してはマウス子宮より分離した間質細胞を利用する。特にADAMDEC-1と細胞接着、または合胞体形成に関する細胞機能への寄与について検証する。 2)ADAMDEC-1の発現時期を確定のうえ、培養細胞およびi妊娠マウスにおける発現調節操作を行うことにより、妊娠生理における役割を評価する。 3)哺乳動物胎盤におけるADAMDEC-1およびCrryホモログのクローニングを行い、シークエンス解析を行う。
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Causes of Carryover |
交付申請時に購入を予定していた画像解析ソフトについてメーカーと打ち合わせたところ、価格変動が見られ、必要なスペックを満たすバージョンが高価になっていた。本ソフトを導入して、免疫染色の解析におけるオートメーション化を進める予定であったが、研究費のバランスを考慮して購入を取りやめた。解析の手段については、既存の簡易ソフトと人力によって補てんする。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
培養実験において試薬や培養液の迅速な調整を行うため、卓上型のクリーンベンチを購入する予定にしている(定価は50万円未満)。現在使用しているクリーンベンチは共通機器のため、試薬や機材の調整には共通機器室まで毎回移動する必要があったが、この設備で研究の進捗度の効率化を図る。
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