2014 Fiscal Year Research-status Report
ブタ凍結乾燥精子のDNA断片化低減と修復機構の解明による産子作製
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26450462
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
菊地 和弘 独立行政法人農業生物資源研究所, 動物発生分化研究ユニット, 上級研究員 (20360456)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ブタ / 精子 / 凍結乾燥 / DNA断片化 / 修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的(現在までの達成度の欄に記述)に従い、以下の実験を実施した。 1. これまでの成果として、トレハロースのDNA断片抑制効果に関する実験を行った。7.5ないし15 mM添加で有意な抑制効果が得られた。顕微授精後の正常受精(前核)率ならびに胚盤胞発生率に差がなかった。このことは、卵そのものにDNA修復効果があると可能性があることが示唆された(Thi Men et al., Theriogenology 2013;80: 1033-44)。 2. 顕微受精卵におけるDNA修復遺伝子の発現について検討した。1.5 mMトレハロースを加えて凍結乾燥精子を作製した。加水後に顕微授精を行い3時間後に回収した。Direct reversal of damageに関与するMGMT遺伝子、single-strand damageに関与するUDG、XPCならびにMSH2遺伝子、さらにdouble-strand breaksに関与するXRCC6ならびにRAD51遺伝子の発現に関してRT-PCRにて検索を行ったが、発現量に差は認められなかった。 3. 受精卵(胚)移植実験:トレハロース処理凍結乾燥精子を顕微注入し、約10時間後に借り腹雌豚に移植を行った。4頭に移植したが、いずれも妊娠に至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、超低温保存が不必要な遺伝資源の保全法の可能性として、家畜(ブタ)における精子の凍結乾燥保存に関する研究を行う。 1)凍結乾燥の際に生じる精子DNA断片化の軽減を目的に、適切な凍結乾燥用の溶液の添加物を選択しその効率化を図る。次に、 2)精子注入卵における断片化DNAの修復機構、とくに修復機構に関与する遺伝性発現について調べる。さらには、 3)世界初となる家畜の凍結乾燥精子からの産子作製を目指す。平成25年度は、1)の目的に従い、トレハロースの効果についての知見を得た。さらに2)のDNA断片化についての次年度につながる前段階の知見を得たことから、研究はおおむね順調に進捗していると判断した。3)の顕微授精卵(胚)の移植実験については成功例を示せなかったことから、次年度以降にチャレンジする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究実施計画 精子のDNAが高度に断片化されている場合、この精子が注入された場合に、実際にDNAの修復に関わる種々の遺伝子が卵において発現するかどうかを検討する。具体的には、単鎖での断片化に関するもの(UDG、XPC、MSH2遺伝子、Wood et al., 2001)、複鎖での断片化に関するもの(XRCC6、RDA51遺伝子)、さらには断片化ではないが直接の遺伝子損傷に関するもの(MGT遺伝子)について、実際に断片化した精子(DNase-I処理により断片化を人為的に亢進させた精子)を成熟卵に注入して、RT-PCRを行い遺伝子発現を解析する。また、発現量が高まってる場合は、siRNAにて発現を抑え、受精率・胚発生率などへの影響を調べる。高発生能を示す胚が得られることが確認されたら、レシピエント豚に受精卵もしくは胚移植を行い、産子作製を目指す。 H28年度の研究実施計画 引き続き、さらに高発生能を示す胚を作製することに注力し、それらをレシピエント豚に受精卵移植もしくは胚移植を行い、産子作製の効率化を目指す。
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Causes of Carryover |
初年度(平成26年度)は、研究実施前にはより高額の機器・試薬が見こまれたが、研究を開始したところ、予定よりその額が下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定では、平成27~28年度の2ヶ年で、前述の遺伝子発現実験ならびに胚移植実験を行う予定でいたが、遺伝子発現実験に関しては平成26年に一部内容を先行させた。遺伝子発現実験に関しては平成27年度に注力し年度内での実験の完結を目指す。遺伝子発現に要する試薬等が高価であるため、使用予定よりも増額して対処する。胚移植実験はレシピエントの確保が難しく実験回数の増加は困難なことから、当初通り(2年間)で行うこととした。
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