2015 Fiscal Year Research-status Report
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26450464
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
阿部 広明 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80222660)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 鱗翅目 / 昆虫 / 性染色体 / W染色体 / レトロトランスポゾン / カイコ / イチジクカサン / 動く遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイコのW染色体に関する変異体を新たに入手したので、これまでに得られているW染色体上のDNAマーカーのマッピング結果を再検討した。その結果、これまでに得られているマーカーの分布を、若干、改める必要のあることが明らかとなった。 これまでにカイコのW染色体上に発見されている多種類の「動く遺伝子」の中に、他の生物のゲノム中では見られない形態をとるレトロトランスポゾン(SBTEと命名)が発見されたが、さらに詳細にW染色体のDNAデータを解析した結果、ある動く遺伝子(短いレトロポゾンと称するタイプ)が、その左右の配列を伴って転移するタイプであることが明らかとなった。 カイコ以外の鱗翅目昆虫のW染色体のDNA塩基配列情報を得るために、イチジクカサンという蛾のW染色体の解析も行った。この種は沖縄県の石垣島で採集された1ペア由来のものを継代飼育しているため、W染色体は1種類である。したがって兄妹のDNAを比較することによりW染色体のマーカーを得ることができる。W染色体のRAPDマーカーを得る実験をしたところ、カイコの場合よりも非常に効率よくマーカーを得ることができた。カイコの場合は3000種類ほどの任意プライマーで12個のマーカーが得られたが、イチジクカサンの場合は、その10倍の効率でマーカーを得ることができた。これからそのDNA塩基配列を詳細に解析する。 動く遺伝子で埋め尽くされているカイコのW染色体であるが、この特徴はカイコだけのものか、あるいは鱗翅目昆虫全般の特徴なのか、これらの点を明らかにするために、鞘翅目昆虫の「Y染色体」の解析も試みた。カブトムシのY染色体特異的塩基配列を得ようとしたが、1個のマーカーが得られたのみで、それ以上の解析は大変困難であった。材料とする昆虫を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カイコでは新たなW染色体の変異体を得ることができ、RAPDマーカーのマッピングがさらに詳細にできるようになった。また、カイコ以外の生物では報告例がない新規のレトロポゾンも発見できた。さらにはイチジクカサンのW染色体上に多数のマーカーを得ることができた。そのイチジクカサンのW染色体DNAマーカーの塩基配列は、すべて決定されていないが、今年度中に決定する予定である。したがって、本研究は、状況としては、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
カイコのW染色体上のマーカーDNAをさらに増やし、W染色体の変異体との組み合わせで、マッピングを詳細に行う。また、まだ構造解析が完了していない転移因子の構造も,さらに進める。イチジクカサンのW染色体上のマーカーのDNA塩基配列を決定し、その解析も行う。また鱗翅目以外の昆虫の性染色体のマーカー探察も行う。
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Causes of Carryover |
イチジクカサンのW染色体マーカーのDNA塩基配列決定が遅くなってしまい、その分の経費が残った。またPCR用の酵素の種類を検討するなどしたため、遅れが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
イチジクカサンのW染色体マーカーのDNA塩基配列決定に使用する。またその際には、新たに使用することにしたPCR酵素を用いる。
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