2015 Fiscal Year Research-status Report
庄内沿岸極浅海域に生息する嫌気的メタン酸化古細菌の多様性・活性評価および培養化
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26450478
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
服部 聡 山形大学, 農学部, 准教授 (40373352)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 嫌気的メタン酸化 / メタン生成 / mcrA遺伝子 / 菌叢解析 / 分離培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では山形県庄内地方の最上川支流河口域の極浅部の堆積物を対象として、嫌気的メタン酸化古細菌(ANME古細菌)の生理生態を明らかにすることを目的としている。本年度はANME古細菌の生態を明らかにするため、菌叢解析を行った。試料としては、昨年度に嫌気的メタン酸化活性(AOM活性)を測定した堆積物のうち、低深度、中深度、高深度堆積物を使用した。堆積物深度ごとにゲノムを抽出後、ANME古細菌およびメタン生成古細菌に特異的な機能遺伝子であるmethyl-Coenzyme M reductase gene(mcrA遺伝子)を用いてPCR増幅を行い、クローニング、塩基配列決定を行った。決定した塩基配列をアミノ酸に変換し、推定アミノ酸配列に基づいた分子系統解析を行った。その結果、低深度堆積物においては ANME古細菌は検出されず、中深度および高深度堆積物において、ANME古細菌に近縁なクローンが検出された。ANME古細菌の内訳として、中深度堆積物においてはANME-3グループに近縁なクローンが、高深度堆積物においてはANME-2aグループに近縁なクローンが多く検出された。このことから、ANME古細菌は堆積物深度に応じて棲み分けを行っていることが示唆された。AOM酸化活性は高深度において最も活性が高かったことから、高深度堆積物中においてはANME-2a古細菌がAOM活性を担う微生物である可能性が示唆された。これらの微生物を分離培養するため、嫌気グローブボックス内で希釈堆積物を各種嫌気プレート培地に無菌的に接種し、特注の圧力培養器内で培養を行った。その結果、水素・二酸化炭素や酢酸等の基質から、絶対嫌気性微生物コロニーの取得に成功した。現在、これらの微生物の継代培養および純化を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
mcrA遺伝子を用いたクローニングにより、異なるANME古細菌のグループが堆積物深度に依存して棲み分けを行っている可能性を明らかにするなど、垂直分布解析に成功している。一方、嫌気グローブボックスを用いた絶対嫌気性微生物のコロニー化については、成功しているものの、想定よりもコロニーの形成率や多様性が低く、培地や培養方法の改良が必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに本研究で得られた絶対嫌気性微生物コロニーの同定を行うとともに、培地成分や培養方法を改良することにより、標的微生物を含む絶対嫌気性微生物の網羅的取得を試みる。
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