2015 Fiscal Year Research-status Report
アルミニウム毒性と膜脂質 ― ゲノム情報に基づく lipidomics解析
Project/Area Number |
26450483
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
砂入 道夫 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80196906)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 環境適応 / アルミニウム耐性 / アルミニウム毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルミニウムイオン(Al)は酸性土壌での植物、特に作物の生育に多大な影響を与えることから増加する人口に対応する食糧増産にとって重要な問題であると考えられている。Alの毒性機構としては、酸化ストレスあるいは膜脂質流動性の攪乱や、メタルイオンの恒常性の攪乱などが関与すると言われているが、その分子メカニズムの詳細はいまだ明らかにされてはいない。我々は酸性土壌に適応した植物・微生物共生系の研究に取り組んできたが、高濃度Al 耐性微生物のAl 耐性と膜脂質組成の間に強い相関があることを見出した。本研究では、高濃度Al耐性微生物あるいは出芽酵母などのモデル微生物について、ゲノム情報に基づき作成された各種変異株の脂質を精密かつ網羅的に(lipidomics) 解析することにより、Al 毒性および耐性と膜脂質の関係を明らかにすることを目指している。 本年度の研究では、モデル生物である出芽酵母BY4741株由来のノックアウト・コレクション(4826 株)を用いた選抜を精密に再度行い、Al感受性に変化を生じた変異株を確定させ、エンドサイトーシスやトリカルボン酸回路などの細胞機能クラスがAl毒性や耐性と相関することを明らかにした。また、これら変異株の中には、スフィンゴ膜脂質やリン脂質の組成や局在性に影響を与える遺伝子群が多く含まれていることを明らかにし、これら変異株細胞を再現性良く調製、分析するための条件を確立し、解析を進めた。一方、高濃度Al耐性微生物を用いた研究については、Acidocella aluminiidurans AL46 株およびRhodotorula taiwanensis RS1 株の脂質組成の検討を進めた結果、昨年度明らかにしたリン脂質量とAl感受性の関連に加え、水酸化脂肪酸量とAl感受性が関連する可能性を認め、これら脂質の解析を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、出芽酵母BY4741 株由来の確実なアルミニウム感受性変異株が得るために、精密な再実験や詳細な統計解析を行うとともに、精密かつ網羅的に解析するために必要な量の均一な細胞を再現性よく安定的に調製する条件を確立できたことから、計画した実験が順調に進み、遅れを取り戻している。
|
Strategy for Future Research Activity |
モデル生物である出芽酵母BY4741株から得られたAl感受性に変化を生じた変異株について、精密かつ網羅的に解析するために必要な量の均一な細胞を再現性よく安定的に調製する条件を用いて、本年度に引き続き、さらに解析を進めて行く。一方、高濃度Al耐性微生物を用いた研究については、リン脂質量とAl感受性の関連に加え、水酸化脂肪酸量とAl感受性の関連についても解析を進めて行く。
|
Causes of Carryover |
本年度までの解析に要する物品費が計画時より少額で済んだことから、次年度の解析のための物品費と本研究で得られた成果を発表するための経費として繰り越すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した金額は、主として解析のための物品費と成果発表に使う予定である。物品費としては解析のための実験消耗品や解析用サーバーのメモリーなど、成果発表としては国際学会発表と学術雑誌投稿などを計画している。
|
Research Products
(1 results)