2015 Fiscal Year Research-status Report
転写因子DAF-16/FOXOによる寿命延長機構のin vivoにおける解明
Project/Area Number |
26450500
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大徳 浩照 筑波大学, 生命環境系, 講師 (30361314)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 老化 / 転写 / 線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、独自に確立した線虫のin vivo レポーターアッセイを駆使して、様々な環境下における長寿転写因子DAF-16の活性を直接的・定量的に評価することで、寿命制御メカニズムの解明を目指すものである。平成27年度の研究成果は以下の通りである。 1. 飢餓や高温、紫外線、活性酸素などのストレスに対するDAF-16の応答をin vivo レポーターアッセイで検証したところ、飢餓と高温でのみDAF-16の転写活性が顕著に亢進した。この時、DAF-16の核凝集とAKTによるリン酸化の低下も認められたことから、これらのストレス刺激がAKTシグナルと拮抗することで内在性DAF-16の活性化を引き起こすことが示された。 2. DAF-16はAKTシグナル経路の他にも、TORシグナルの低下や生殖細胞の欠失などの長寿環境下において、その活性が必要であることが分子遺伝学的に示されている。このとき実際にDAF-16の転写活性化が起こっているかをin vivo レポーター検証したところ、いずれにおいても活性化がみられた。一方で、DAF-16非依存的な寿命延長を示すカロリー制限模倣変異体eat-2においては、DAF-16による転写活性化はみられなかった。以上の結果は、寿命延長とDAF-16活性の間に正の相関があることを強く示唆している。 3. 線虫においてSirtuinファミリーのひとつであるsir-2.1は、DAF-16を脱アセチル化することでその転写活性を亢進させ、寿命延長に寄与すると考えられている。しかしながら一方で、それとは相反する報告もされており、未だ議論は続いている。これを検証するため、sir-2.1変異におけるDAF-16の活性を評価したところ、sir-2.1がDAF-16のコアクチベーターとして機能する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述した研究成果に加え、線虫からのDAF-16タンパク質の精製と質量分析による翻訳後修飾部位の同定にも着手している。また新たにCRISPR-Cas9システムによるゲノム編集技術も確立できており、DAF-16転写活性ドメインを欠失した変異体の樹立とその解析も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、本研究成果を論文として投稿すべく、補足的なデータも含めて完成度を高める。 また新たにCRISPR-Cas9システムによるノックインにより、DAF-16リン酸化部位への変異導入による恒常的活性化型DAF-16を発現する系統の樹立を目指す。
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Causes of Carryover |
線虫の飼育維持に関わる費用が、前年度に想定していた額より抑えられた。 また抗体等の購入にかかる費用も安く抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿にかかる諸費用、および研究成果の海外学会発表等に使用する予定である。
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