2014 Fiscal Year Research-status Report
高ヨウ素栄養作物の作出に向けたヨウ素蓄積関連遺伝子の単離と解析
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26450501
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中村 達夫 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 准教授 (50334636)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / ヨウ素 / 遺伝子 / 生理学 / 遺伝学 / 生態型 |
Outline of Annual Research Achievements |
微量栄養素の欠乏は途上国を中心に大きな問題となっている。中でもヨウ素については約20億人が欠乏状態にあり、鉄欠乏、ビタミンA欠乏とともに三大微量栄養素欠乏症の一つとも言われている。高ヨウ素栄養作物を育種し普及させることは、世界のヨウ素欠乏症の解決に貢献すると考えられる。私達はこれまでに、実験植物のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)をモデルとして、ヨウ化物イオンに対するメチル化活性を持つAtHOL1タンパク質をコードする遺伝子の破壊により、組織中のヨウ素含量が上昇することを示している(中村達夫ほか、ヨウ素高含有植物の作製方法、特許第5692695号)。しかし、植物においてヨウ素蓄積の量や組織特異性等を計画的に制御するためには、ヨウ素蓄積に関わる新規遺伝子を同定して機能解析を行い、ヨウ素蓄積機構の全容を解明することが重要と考えた。そこで本研究計画では、未だ十分に解明されていない植物のヨウ素蓄積に関与する新規遺伝子を同定するために、世界のさまざまな地域で採種されたシロイヌナズナ生態型が持つ自然変異を利用した遺伝学的解析を行うこととした。平成26年度は、多数のシロイヌナズナ生態型についてヨウ素含量などの表現型解析を行い、解析した生態型間に観察される表現型の差違について解析を行った。各生態型について利用可能な遺伝型情報(一塩基多型、SNPs)を利用して、表現型と遺伝型との相関を解析することで、表現型と相関のある遺伝子領域の絞り込みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、多数のシロイヌナズナ生態型を利用した遺伝学的解析を行う。そこで平成26年度は、種子ストックセンターより300種類以上のシロイヌナズナ生態型の種子を入手し、表現型解析のために必要な種子の増殖を行った。表現型解析のために必要な培養条件(培地組成、培養日数、光条件など)や、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いたヨウ素分析条件を慎重に検討することにより、シロイヌナズナ生態型の表現型解析を安定して実施できるようになった。ICP-MSはヨウ素だけでなく他のいくつかの元素についても同時に分析できることから、元素間の相関についても解析が可能になった。得られたヨウ素蓄積に関する表現型情報と、利用可能な遺伝型情報(SNPs)を用いて、ゲノムワイド関連解析(GWAS解析)を行うことにより、シロイヌナズナにおけるヨウ素蓄積と有意な相関を示すいくつかの遺伝子について情報が得られた。これまでに植物のヨウ素蓄積に関わることが遺伝学的に証明されているのは、シロイヌナズナのAtHOL1遺伝子のみであるが、今回得られた候補遺伝子の染色体上の位置はAtHOL1の位置とは異なる。そのため、これらの候補遺伝子について解析を進めることにより、ヨウ素蓄積に関わる新規遺伝子の同定が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により得られた候補遺伝子について、シロイヌナズナのT-DNA挿入株またはトランスポゾン挿入株を入手し、これらが得られない場合はRNAi法により発現抑制株を作製する。候補遺伝子を十分に絞った時点で、各候補遺伝子について過剰発現株を作製する。得られた遺伝子改変株についてヨウ素蓄積量などの表現型を解析することで、責任遺伝子を同定する。遺伝子改変株を利用して、責任遺伝子の改変がヨウ素蓄積様態に与える影響について、組織特異性や生育段階特異性などの観点から詳細に解析する。責任遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列から生化学的機能が推定される場合は、大腸菌を用いて融合タンパク質を作製し、これを用いて生化学的機能の証明を行う。また、GFPを用いた細胞内局在解析を行う。これらの解析で得られる知見を総合的に考察し、ヨウ素蓄積機構における責任遺伝子の役割を明らかにする。
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Research Products
(1 results)