2015 Fiscal Year Research-status Report
ジャガイモ塊茎形成におけるフロリゲン複合体の機能解析および育種への展開
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26450502
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
田岡 健一郎 横浜市立大学, 付置研究所, 特任助教 (00467698)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フロリゲン / ジャガイモ / 塊茎形成 / FT / TFL1 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に作成した、ジャガイモの塊茎形成制御に関わるフロリゲン複合体の構成要素候補のFDホモログ (StFD, StFDL1a, StFDL1b)やTFL1ホモログの過剰発現体やRNAi発現抑制体の表現型解析を行った。その結果、3種類のFDホモログの過剰発現体では、非形質転換対と比較して塊茎形成時期に違いは観察されなかった。発現解析では3つのFDの発現量はストロン(地下茎)分化の過程で大きく変化しないことから、FDは恒常的に十分量発現しており、その発現量の上昇が塊茎形成促進に必須ではないことが示唆された。RNAi発現抑制体の解析では、トマトの花成促進にかかわるSPGBのオーソログと考えられるジャガイモFDホモログStFDのRNAiは塊茎形成時期に影響しなかったのとは対照的に、StFDL1a/bのRNAiでは有意な塊茎形成遅延が観察された。これは、転写因子の置換によってフロリゲン複合体の標的が変化するという作業仮説を支持している。TFL1ホモログについて、前年度に作成した過剰発現体やRNAiによる発現抑制体の表現型解析を行った。4つのTFL1(StSP, StBFT1, StBFT2, StSP9D)の過剰発現体は長日条件において、いずれも塊茎形成時期の遅延が観察された。発現解析から、4つのTFL1のうち、StSP, StBFT1がストロンで強く発現していた。そこで、StSP, StBFT1のRNAi発現抑制体の表現型解析を行ったところ、長日条件において有意な塊茎形成促進が観察された。実験スペースをとらず観察が容易な試験管内での塊茎誘導アッセイ系を用いて塊茎形成能を評価したところ、同様に、長日条件において塊茎形成促進が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年の実験計画のうち、塊茎を誘導するフロリゲンの直接な標的遺伝子と考えられる初期応答遺伝子の同定については、計画した実験では今のところ成功していない。しかし、本研究の最重要課題のひとつであるTFL1の機能解析を集中的に行い、フロリゲン・アンチフロリゲンによるバランス制御仮説を支持する結果が得られつつある。フロリゲンの複合体形成による塊茎形成促進に関しては、計画していた実験から予定していたデータがそろい、論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られた結果を基にして、FDホモログやTFL1ホモログの過剰発現体やRNAi植物体)の塊茎形成時期の解析を行う。TFL1ホモログのFDホモログや14-3-3への相互作用解析を行う。塊茎が形成されるストロンでのFDホモログの詳細な発現解析を行なう。
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Causes of Carryover |
作業仮説の検証に重要なTFL1形質転換植物の表現型解析(鉢植え植物の塊茎形成時期解析)やTFL1発現解析を重点的に進めた。これらの実験は高価な試薬を使わないため、当初計画より少ない支出となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度にあたり、成果とりまとめを行うため、TFL1関連の実験(相互作用解析、発現解析のコンストラクト作成)を重点的に行う。それらの実験に関する試薬購入や、フロリゲンに関する論文作成・掲載の費用などにあてることで、全体の計画を当初の予定通りに遅滞なく進ませる。
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