2014 Fiscal Year Research-status Report
ルテナサイクルの形成を機軸とする新規環化反応の開発と応用に関する研究
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26460002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 望 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80349258)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アレン / アルキン / ルテニウム / ルテナサイクル / 環化反応 / ルテニウムカルベン |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は1,6-アレンインと2価ルテニウム錯体から形成されるビシクロ[3.3.0]オクタジエン型のルテナサイクルの反応性について検討を進めた。すなわち、まず9,9-ジメチルデカ-6,7-ジエン-2-インと[Cp*Ru(MeCN3)]PF6錯体を反応させてルテナシクロペンテンを調製した。そのルテナサイクルをプロトン化して生成するルテニウムカルベン中間体に、様々な炭素求核剤を付加させるべく検討を行った。アルコールやカルボン酸、メルドラム酸を初めとする炭素酸などの種々のプロトン源を用いたところ、ルテニウムカルベン中間体の形成を確認することができた。 一方、生じたルテニウムカルベンに炭素求核剤であるカルバニオン、シリルエノールエーテル、シアニドイオン、シアノシラン、トリフルオロメチルシランなど、様々な求核剤を反応させるべく徹底的にスクリーニングを行ったものの、目的とする炭素求核剤が導入された環化成績体を収率良く得ることはできず、わずかに系中の水等が導入された環化体が副生成物として生じるのみという結果を与えた。 本結果より、1,6-アレンインと2価ルテニウム錯体から生じたルテナサイクルの反応性として、炭素求核剤の付加が進行しないことが明らかになった。 また、1,7-アレンインを基質とし、同様に求核剤の導入を伴う環化反応を進行させるべく上述した様々な条件下で検討を行った。その結果、これまでに代表者が報告した環化二量化ならびに[2+2]環化反応が進行し、多環式化合物のみが得られることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初想定していた研究目的の1つとして、「Type IIルテナサイクルを経由して生成するカルベン中間体の反応性の検証とその利用」を取り上げ、当該年度はその目的の達成に向けた検討を進めてきた。すなわち、9,9-ジメチルデカ-6,7-ジエン-2-インと[Cp*Ru(MeCN3)]PF6錯体から生成したルテナサイクル(Type II)からカルベンを発生させる手法として、これまではメタノールなどのアルコールを用いていた。今回アルコール以外にも、カルボン酸やメルドラム酸のような炭素酸も用いることを見出し、ルテナサイクルの反応性に関して新しい知見を得ることに成功した。一方、ルテニウムカルベンへ付加する求核剤として、シリルエノールエーテル、ビニルシラン、シアノシラン、カルバニオンなどの様々な炭素求核剤を系統的かつ徹底的に検討したが、当初目的とした炭素求核剤が導入されて環化体を収率良く得ることができず、系中に含まれる水が付加したような、これまで得られてきた環化体をえるのみであった。このように、1,6-アレンインより形成されるType IIルテナサイクルの反応性に関する新たな知見を得ることはできたものの、有機合成への利用という観点から考えると目的の達成は不十分と言わざるを得ず、区分3の達成度とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究遂行にあたっては、引き続きルテナサイクルの反応性の更なる検証と新しい環化反応の開発を目指す。具体的には下記2点に焦点を当て、研究を遂行する予定である。 1)1,6-アレンインから形成されるType IIルテナサイクルの反応性の検証。当該年度においてはType IIルテナサイクルから生じるルテニウムカルベン種の反応性に焦点を当てた研究を行ったが、27年度はルテナサイクルそのものの更なる反応性を検証する。特に、ルテナサイクルへ他のコンポーネントの挿入による多環式骨格の構築を目指す。エチレン、アセチレンなどの炭素炭素不飽和化合物や、一酸化炭素やイソニトリル等のカルベン性化合物、さらに二酸化炭素などのC1ユニットが挿入するかについて検討する。 2)1,7-アレンインを基質とした配位子制御によるルテナサイクルの選択的形成。これまで1,7-アレンインの環化反応において、中性2価ルテニウム錯体を用いるとType Iのルテナサイクルが、一方カチオン性2価ルテニウム錯体を用いるとType IIルテナサイクルが形成されることが分かっている。27年度においては0価ルテニウムを用い、反応系に配位子を添加することにより、配位子制御に基づくルテナサイクルの形成が可能ではないかと考え、このことについて研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度中に全額使用済みであるが、年度末に購入した物品の支払いが本報告書の作成時点で反映されていないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり、平成26年度中に全て使用済みである。
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Research Products
(7 results)