2014 Fiscal Year Research-status Report
Z型配位子を有するカチオン性金属錯体の合成とその応用研究
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26460004
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
稲垣 冬彦 金沢大学, 薬学系, 准教授 (80506816)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Z型配位子 / 金 / 触媒反応 / 環化反応 / 金属活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子受容性配位子(Z 型配位子)を有する金属錯体は少なく、触媒とし活用する例は極めて少ない。交付申請書に示したように、これまでにZ 型配位子(ホウ素原子)含有カチオン性金錯体[Au(DPB)SbF6]2(cod)(1)(DPB = diphosphine-borane)を合成すると共に、1 が空気中で安定で、長期保存可能であることを見出している。研究実施計画では今年度においては新たなZ型配位子含有金錯体の創出を目的としていたが、同時展開していたZ型配位子の電子求引性効果(当初H27年度実施予定)について新たな知見が得られたため、計画を変更し、金触媒1の構造解析と、1を用いた環化反応における新たな機能性創出を検討した。 まず、構造解析を行うために1の再結晶を試みたところ、1の代わりにAu(DPB)SbF6の単結晶が得られることを見出した。これは、溶媒中で配位子のcodが容易に解離可能であることを示している。更に、Z線結晶構造解析を行ったところ、Au-B間の結合距離は、既知のAu(DPB)Clの場合よりも長くなっていることが明らかとなった。 種々の1,6-及び1,7-エンイン体の環化反応を1の存在下行ったところ、Z 型配位子を持たない金触媒[Au(PPh3)n]SbF6 (n=1,2)に比べ、収率、汎用性共に優れていることが明らかとなった。またZ型配位子の効果は、1,8-エンイン体 2を用いた[2+2]環化付加反応において特に顕著であった。 以上の成果をAngew.Chem.Int.Ed.誌にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、交付申請書の研究実施計画の順序を変更して平成27年度分の計画を実施し、所望の知見が得られたため。今後、平成26年度分の実施計画に従い研究を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、文献に従い合成したAu(DPB)Cl(DPB = diphosphan-barane)を、CODと3種の銀塩(AgSbF6, AgNTf2, AgClO4)とそれぞれ添加したところ、対応するカチオン性錯体[Au(DPB)(COD)]X(X=SbF6, NTf2, ClO4)を合成することができ、合成した錯体を触媒にエンイン体との環化異性化反応が進行することを見出した。そこで、金-ホウ素原子間の相互作用の強さを変化させるために、ベンゼン環上の置換基Rに、電子供与性基(メチル基やメトキシ基等)或いは電子求引性基(エステル基やニトロ基等)を導入した金錯体の合成を試みる。また、溶液中での解離の度合いを調節するために、配位子Lにシクロオクテンやベンゼン等、π性の配位子成分やピリジン等の非共有電子対を用いた合成も行う。更に、その他のカウンターアニオン( X=OTf, BF4, PF6等)を適用した場合にも合成が可能か試みる。また、合成した錯体を用いて、新たな触媒反応の創出を図る。
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Causes of Carryover |
研究の進捗度合いにより、当初平成26年度に行う予定であった研究計画と平成27年度の研究計画を入れ替えたため。当初の平成26年度計画ではa)各種金属錯体の合成を行う予定であったため、多額の費用が必要であり、当初の平成26年度計画ではb)触媒反応の検討であったため、a)に比べ研究費の支出が少ないと見込んでいた。実際、平成26年度にはb)を実施し、当初の平成27年度に見込んでいた支出額に納まった。一方、今年度(平成27年度)は、当初の平成26年度計画であったa)を行う予定であるため、次年度使用額分が必要と考えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように今年度の研究実施計画は、交付申請書の平成26年度分の計画に基づき行っていく。現在、良好な予備的結果が得られており、首尾よく研究が進捗した場合には28年度計画分も前倒しして行っていく予定である。
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