2014 Fiscal Year Research-status Report
計算創薬のための蛋白質複合系の精密構造・相互作用解析手法の開発
Project/Area Number |
26460035
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 成典 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (10379480)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | インシリコ創薬 / リガンドドッキング / 電子状態計算 / 相互作用解析 / クラスター分析 / ハイパフォーマンスコンピューティング / フラグメント分子軌道法 / 産官学連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、フラグメント分子軌道(Fragment Molecular Orbital; FMO)法に基づくタンパク質-リガンド分子系の電子状態計算を行い、構造ベース・インシリコ創薬の基盤技術を構築することを大きな目標としている。平成26年度は主に、FMO相互作用エネルギー(Inter-Fragment Interaction Energy; IFIE)解析に基づく薬剤候補分子のクラスタリングならびにスクリーニング技術の開発を行った。理化学研究所のSCLS計算機システムならびに神戸大学統合研究拠点のπ-Computerシステム(ともに富士通FX10)を用い、エストロゲン受容体などの核内受容体タンパク質とそれに対する多数のリガンド分子の結合構造を準備し、電子相関をMP2レベルで取り入れたFMO全電子計算を行って、リガンド分子とアミノ酸残基の間のIFIEからクラスター解析を実行した。FMO計算に基づくクラスター分析手法としては従来、VISCANA(VISualized Cluster ANAlysis of protein-ligand interaction based on the ab initio fragment molecular orbital method for virtual ligand screening)が知られているが、今回はそれに加え、SOM(Self-Organizing Map)やMDS(Multi-Dimensional Scaling)などの高次元クラスタリング手法も適用した。その結果、開発した手法が、例えばエストロゲン受容体に対して強い結合性を示す化合物群の同定とともに、そのリード化合物の発見や、アゴニストとアンタゴニストの分類、リード最適化などにも有効であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に挙げた3つの課題のうち、平成26年度は主に、FMO-IFIE解析に基づく薬剤候補分子のスクリーニング手法の開発にフォーカスして研究を推進した。これにより、上記「研究実績の概要」に述べた成果が得られ、その内容を学術論文として発表した。また、関連研究として、インフルエンザウイルスのトリからヒトへの感染の分子メカニズムに関するFMO解析も行い、論文で報告した。血管内皮リパーゼの構造シミュレーションも着実に進展している。さらに、FMO法の生体分子ならびにナノ材料系への様々な適用事例に関し、Phys. Chem. Chem. Phys.誌にレビューを執筆した。 我々は、国内の産官学が連携した形で、構造ベース・インシリコ創薬の基盤技術を構築することを大きな目標の一つとしているが、それに関しても、下記の「今後の研究の推進方策等」でも述べるように、「FMO創薬コンソーシアム」の設立やHPCI課題の採択などの点で大きな進展があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
我々のグループでは、FMO法に基づいてタンパク質-リガンド分子系の電子状態計算を行い、また、SPring-8などとも連携して、構造ベース・インシリコ創薬の基盤技術を構築・提供することを大きな目標としているが、平成26年度の研究実績を基に、2014年11月に、産官学共同でFMO法の創薬応用の基盤技術を構築することを目指す「FMO創薬コンソーシアム」を設立した(代表者:日本大学・福澤薫)。ここには、いくつかの大学、国立研究所とともに、製薬を中心とした民間企業10社以上も加わり、FMO法を実際の創薬の現場で活用するための実践的なノウハウやプロトコルの開発・共有を進めている。また、「HPCIを活用したFMO創薬プラットフォームの構築」という研究課題で平成27年度の「京」産業利用枠にも採択され、本格的にコンソーシアムの活動がスタートした。今後は、これらの連携を有効活用し、タンパク質-リガンド分子系の精密構造決定や、化学反応も含めたリガンド結合ダイナミクスの定量化ならびに可視化といった研究テーマにも取り組んでいく。
|
Causes of Carryover |
平成26年度予算中、旅費による出費が予想より少なく、トータルで11,110円の剰余を生じたが、平成27年度に回して有効活用したほうがよいと考え、次年度使用額とした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の旅費等の一部として使用する。
|