2014 Fiscal Year Research-status Report
NMRを用いたエイコサノイド代謝関連膜タンパク質群の動的構造解析
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26460038
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
坂倉 正義 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 助教 (20334336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 栄夫 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (60265717)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 構造生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
エイコサノイドの代謝・輸送に関与し、抗アレルギー疾患薬の標的分子と考えられている4回膜貫通型タンパク質FLAPについて、NMRを用いた高次構造解析・相互作用解析に向けた試料調製方法の検討を行った。これまでに構築していた大腸菌を用いたリコンビナントタンパク質発現系に加えて、酵母Pichia pastorisを用いた発現系を構築した。酵母の培養条件、膜中に発現したFLAPの可溶化条件、および構造解析に適したFLAP可溶化条件のそれぞれについて最適化を行った結果、酵母の膜画分から、1 L培養当たり約27 mgの精製FLAPを得ることに成功した。この収量は、大腸菌の膜画分から得られる収量の約50倍であった。次に、得られたFLAPについて物理化学的性状解析を行い、LMPGミセル中においてFLAPが、主にαへリックスを形成していること、三量体を形成していること、直径約6 nmの分散した均一な球状粒子として存在していることを明らかにした。さらに、FLAPの膜貫通領域に存在する残基の構造情報を抽出することを目的として、メチオニン残基のメチル基に13Cを導入したサンプルを調製し、NMRスペクトルの測定を行った。その結果、大腸菌により発現したFLAPについては、測定開始の3時間後に、TMH4上に存在するM125由来シグナルの広幅化が観測された。一方、酵母により発現したFLAPについては、12時間経過してもスペクトル変化が観測されず、LMPGミセル中において、酵母により発現させたFLAPが、大腸菌により発現させたFLAPと比較して安定性が高いことが示された。酵母膜を構成する特徴的な脂質(ステロール類など)がFLAPを安定化し、FLAPに結合した状態で、界面活性剤により可溶化された可能性があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに構築していた大腸菌発現系を用いて調製したFLAPは、収量および安定性が低かったため、数日間の実験時間を要する主鎖アミド基の帰属・緩和解析を進めることができなかった。しかし、酵母を用いたFLAP発現系の構築、メチル基選択的標識サンプルの調製プロトコールの確立により、サンプル調製の負担が軽減され、今後より高感度なメチル基を観測対象とした解析を行うことが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
1、リコンビナントFLAPの安定性を向上させるためのサンプル調製条件の検討を行う。第一に、FLAPを可溶化するための擬似膜環境について検討を行う。これまでの解析に用いてきた界面活性剤(LMPG)以外の界面活性剤中でのNMR解析、およびナノディスク等を用いた、脂質二重膜中でのNMR解析について検討を行う。 2、FLAPと、FLAP阻害剤であるMK-591およびナチュラルリガンドであるアラキドン酸との相互作用解析を行い、FLAPのリガンド結合活性について検討を行う。これまでの解析において、MK-591添加によるFLAPのNMRスペクトルの変化は観測されているが、変化量が小さく、またスペクトル変化から予想される親和性が、これまでに報告されている値と比較して低い。この理由として、FLAPが不活性化している可能性と、MK-591が界面活性剤ミセル中のFLAPにデリバリーされていない可能性が考えられる。したがって、項目1と平行してFLAPとMK-591との相互作用解析を進め、リガンド結合活性を有するFLAPサンプルの調製条件を探索する。 3、数日間安定なサンプル条件が見出された場合には、当初の計画通り、主鎖アミド基を観測対象とした帰属・緩和解析を進める。 4、サンプルの安定性が向上しない場合は、観測対象を測定感度の高いメチル基に変更する。この場合、NMRシグナルの帰属は部位特異的変異実験により行う。
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Causes of Carryover |
リコンビナントタンパク質の重水素標識を行うために、安定同位体標識化合物(主として重水)を購入するための予算を確保していたが、重水素標識サンプルの調製回数が少なかったため、この予算を完全に消費しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後、主鎖アミド基を観測対象とした帰属・緩和解析を進める場合には、重水の購入に研究費の多くを割り当てる。メチル基を観測対象とした帰属・緩和解析を進める場合には、同位体標識アミノ酸(前駆体)の購入に研究費を充てる予定である。
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