2014 Fiscal Year Research-status Report
CAEシミュレーションを基盤とするインシリコ製剤設計技術の確立
Project/Area Number |
26460047
|
Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
高山 幸三 星薬科大学, 薬学部, 教授 (00130758)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | CAEシミュレーション / 有限要素法 / DPCモデル / 残留応力 / 粉体 / 錠剤 / 硬度 / 崩壊時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
服薬の利便性から現在最も汎用される剤形は錠剤である。錠剤は臼杵を用いて粉体を圧縮することにより製造されるため、錠剤内には抜圧後も様々なベクトルを持った応力が残留する。残留応力の強度と分布は、錠剤の硬度や崩壊性等、重要品質特性に大きな影響を及ぼす可能性がある。 本研究ではモデル処方として、ラクトース、コーンスターチ及び結晶セルロースの配合比を変化させた合計6種類の粉体を調製し、これらの粉体の圧縮プロセスをDrucker-Prager Cap (DPC)モデルにより定義した。DPCモデルでは、弾塑性や摩擦に関わる13種類のパラメータによって粉体をモデル化することが可能である。残留応力の推定にはCAEシミュレーションの一手法である有限要素法(FEM)を適用し、粉体の充填、加圧及び除圧過程を解析した。その結果、いずれの錠剤においても垂直応力とせん断応力が錠剤内に残留し、その強度と分布はラクトース、コーンスターチ及び結晶セルロースの配合比によって変化することが認められた。また、これらの賦形剤を等量配合した処方において残留応力の分布が最も不均一となった。X軸垂直応力は主に臼壁から中心に向かって発生し、Y軸垂直応力は特に錠剤上部中央付近で上杵方向に向かって発生した。また錠剤の上杵エッジ付近から中央下部にかけて正負逆方向のせん断応力が残留し、この傾向が強い処方では、キャッピング等の打錠障害を起こす可能性が示唆された。 残留応力分布による錠剤の硬度と崩壊時間の予測を試みた結果、重回帰分析により両特性とも極めて高精度に予測することができた。これよりFEMシミュレーションは、優れた品質を有する錠剤を設計する上で重要な基盤情報を与えるものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CAEシミュレーションによる錠剤内残留応力分布の推定とその代表値を用いた重要品質特性の予測を主たる目的として研究を実施した。研究はおおむね順調に進展し当初の計画を達成することができている。 錠剤の製造工程で汎用される湿式顆粒圧縮法についても併行して解析を進め、粉体圧縮よりも顆粒圧縮の方が応力残留の程度が軽減することを見い出した。また錠剤の上下面が凸状に膨らんだR錠についてもCAEシミュレーションを実施し、実験的検証を行った。その結果、曲率が強くなるほど応力が残留しやすくなり、このことが重要品質特性に大きく影響することを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
残留応力分布のシミュレーション結果と重要品質特性間の因果関係を詳細に解明するために、新たな多変量解析の手法を導入して検討を加える。例えば、アンサンブルニューラルネットワーク、コホネン自己組織化マップ、ベイジアンネットワーク、多次元薄板スプライン補間、ブートストラップリサンプリング等、データの線形性やパラメトリック性の制約を受けない先端的な統計手法を導入し、重要品質特性の高精度予測と因果関係の解明を試みる。 CAEシミュレーションの結果を実験的に検証するために、X線断層写真やテラヘルツイメージングよる密度分布の測定を行う。近年、これらの機器の技術的進歩は目覚ましく、重要な知見が得られる可能性がある。また錠剤表面の圧密状態を測定する簡便な手段として、受発光一体型センサーや感圧発色マイクカプセルの利用を試みる。これらの実験結果によってCAEシミュレーションの妥当性が検証されれば、様々な機能を有する錠剤の設計にCAEシミュレーションを有効活用することができる。連続打錠工程における打錠障害を未然に防ぐ有益なツールとしての可能性について検討する。
|
Causes of Carryover |
原薬や賦形剤等の消耗品の購入額が当初の予定より幾分減額したことによる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
基礎理論が確立したため、次年度はより多くの実験結果を集積し理論の検証を行う計画である。
|