2015 Fiscal Year Research-status Report
固相マイクロ抽出法に基づく生体酸化損傷マルチマーカーの同時分析システムの開発
Project/Area Number |
26460053
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
片岡 洋行 就実大学, 薬学部, 教授 (80127555)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 固相マイクロ抽出法 / オンライン自動分析 / 生体酸化ストレス / バイオマーカー / LC-MS/MS分析 / 8-OHdG / 8-イソプロスタン / 3-ニトロチロシン |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は、前年度に開発したDNAや脂質、蛋白質の酸化損傷を捉える生体酸化ストレスマルチマーカーのオンラインインチューブ固相マイクロ抽出(SPME)/液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)法を用いて、尿試料だけでなく、毛髪や唾液試料分析に適用した。 1. DNA酸化で生じる8-OHdG、脂質酸化で生じる8-イソプロスタン(8-IP)、蛋白質酸化で生じる3-ニトロチロシン(3-NT)を分析対象として、ネガティブ/ポジティブモードに切り替え連続一斉LC-MS/MS分析により、毛髪及び唾液試料分析への適用を検討した。毛髪試料はアルカリ溶解またはメタノール抽出後、唾液試料は限外濾過後、それぞれ分析を行ったところ、添加回収率も良好で、再現性よく定量できることが分かった。 2. 長期的な酸化ストレスの状態を把握するために、毛髪試料を分析したが、非喫煙および喫煙者のいずれからも3つのマーカーは検出されなかった。一方、唾液試料は血中濃度を反映することから短期的な酸化ストレス状態を把握できると考えられるが、正常人の唾液からは8-IPのみが検出された。 3. 本法を用いて、非喫煙及び喫煙者の唾液試料分析に適用した結果、喫煙により8-IP濃度が上昇した。また、抗酸化機能食品の効果を解析するために、高濃度カテキン茶を喫煙時に摂取したところ8-IP濃度上昇が抑えられた。また、1例ではあるが、正常では検出できなかった3-NTが風邪による発熱炎症時にわずかに検出された。 本研究は、非侵襲的で簡便かつ高感度選択的な分析法により酸化ストレスの状況を把握できることから、DNAや脂質、蛋白質の酸化損傷のマルチバイオマーカー解析による健康影響や疾病診断などへの応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開発したインチューブSPME/LC-MS/MS法は尿や唾液試料に適用できたが、マンパワー不足と装置の故障などがあり、健康影響の解析などへの展開が不十分である。実用化するためには、測定データから酸化ストレスを明確に解析できることが必要であり、それらの点についての十分か検証ができておらず、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度が研究計画の最終年度であり、疾病の早期診断や予防に繋がる非侵襲的分析法として、老化や様々な疾患との関連が示唆されている終末糖化産物(AGEs)などの新たな酸化ストレスバイオマーカーの検索に取り組んでいる。本年度は、老化/疲労・ストレス、飲酒・飲食、運動による健康影響評価や抗酸化機能食品の摂取の効果解析、糖尿病との関連などに本手法を応用して、その有効性を検証する。また、本手法と既存の手法との相関性を検討するために、尿中酸化ストレスマーカー測定システムを導入する。さらに、3年間の研究成果をとりまとめ、学会発表や学術論文に公表する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の当初計画が、「現在までの達成度」に記載した理由により、やや遅れてしまったため、その分に使用する予定の予算が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たなバイオマーカー標準試薬の購入、尿中酸化ストレスマーカー測定システムの購入、生体試料サンプリング及び前処理に必要な器具類の購入、試料提供者や研究補助者への謝礼等に使用する予定である。また、採取年度に当たり、論文の英文校正、投稿料、別冊印刷代にも充てる予定である。
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