2016 Fiscal Year Research-status Report
前がん病変で発現上昇するクロマチン関連因子による細胞死制御
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26460072
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
長田 茂宏 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 准教授 (40263305)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒストン / ヒストンアセチル化 / ヒストンメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前がん病変は正常細胞からがん化した細胞への変換時期であり、がん化促進因子、防御因子の両方に大きな発現変化が生じている。これまでに肝前がん病変において発現上昇するクロマチン機能制御に関わる因子を複数単離しており、これらの因子の細胞死制御における役割を明らかにする。H28年度は、アルギニンメチル化酵素CARM1スプライシングバリアントのタンパク質安定性および標的遺伝子の発現に与える影響を検討した。また、ヒストンアセチル化酵素HBO1がオートファジーに与える影響、ヒストン脱アセチル化酵素Hdac9スプライシングバリアントが相互作用因子に与える影響も検討した。 アルギニンメチル化酵素CARM1.v1およびスプライシングバリアントCARM1.v4の局在を検討するため、GFP-CARM1.v1およびGFP-CARM1.v4安定発現細胞を作製した。その過程において、これらの因子のタンパク質安定性が異なることが示された。また、標的遺伝子の発現制御に与える影響も異なり、これらのスプライシングバリアントの役割が異なると考えられた。 ヒストンアセチル化酵素HBO1はラパマイシン誘導のオートファジーの過程において発現上昇することが明らかとなった。しかし、高濃度ラパマイシンにより細胞死が誘導される過程においては、発現量がタンパク質レベルで減少することが示された。また、HBO1はオートファジーを抑制する傾向が観察された。 ヒストン脱アセチル化酵素HDAC9ががん細胞の足場非依存的増殖活性を促進することをこれまでに明らかにしている。そして、その相互作用因子HAP1がその作用を抑制することも示している。HDAC9のHDAC活性領域を欠くスプライシングバリアントMITRもHAP1と相互作用することが免疫沈降法により示され、MITRの局在にHAP1が影響を与えることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CARM1はがん化の過程において核および細胞質において発現量が増加する。その分子機構、意義は不明であり、スプライシングバリアントに注目して解析を進めている。GFP-CARM1.v1およびGFP-CARM1.v4安定発現細胞を用いた解析の結果、細胞周期依存的局在変化にこれらの因子に違いは観察されなかった。しかし、これらの因子はプロテアソーム阻害剤MG132感受性に違いがあった。また、CARM1.v1, CARM1.v4ともにユビキチン化されることが示された。標的遺伝子に与える影響については、細胞死を誘導するエトポシド添加状態と非添加状態で比較した。CARM1.v1とCARM1.v4で標的遺伝子に与える影響がエトポシド非添加状態と添加状態で異なることが示されたことから、スプライシングバリアントの機能の違いの解明に繋がると考えられる。 HBO1はオートファジーが誘導される過程で発現が上昇し、細胞死が誘導される状態ではHBO1の発現は減少した。HBO1発現がオートファジーに与える影響を、オートファジー誘導のマーカーGFP-LC3の安定発現細胞を用いて解析した。そして、HBO1過剰発現はオートファジーを抑制する傾向、発現抑制はオートファジーを促進する傾向を示した。これらの解析から、HBO1はオートファジーを抑制する因子として機能する可能性を見出し、細胞死制御に関する知見に繋がると考えられる。 HDAC9ががん細胞の足場非依存的増殖活性を促進する機構のひとつとして、細胞死の抑制を考えている。HDAC9の相互作用因子として同定したHAP1がHDAC9の足場非依存的増殖能促進を抑制する。HDAC領域を欠いたスプライシングバリアント、欠失変異体を用いた解析により、HDAC9のアミノ末端側の半分の領域がHAP1との相互作用に必要であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
CARM1.v1, CARM1.v4の分解系の違いを解析するために、ユビキチン化、SUMO化による影響のバリアント間の違いを検討する。また、これらの因子の役割の違いを検討するために、種々のがん細胞において、p53標的遺伝子の発現にCARM1.v1, CARM1.v4が与える影響を検討する。また、エトポシドなどによる細胞死を誘発させる条件において、これらの因子の過剰発現が細胞死に与える影響を解析し、これらのバリアントと細胞死制御の関係を検討する。また、CARM1.v1, CARM1.v4の分解性の違いを核、細胞質にわけて検討することにより、核、細胞質におけるこれらの因子の役割の違いに関する知見を得る。 HBO1がオートファジーに与える影響をGFP-LC3によるドット形成以外の評価系により評価する。また、HBO1がその他の細胞死経路に与える影響を解析し、HBO1が細胞死制御に与える影響を検討する。その際にアセチル化酵素活性変異体を用いることにより、細胞死制御にアセチル化酵素活性の必要性の有無を検討する。 HDAC9およびスプライシングバリアントがp53標的遺伝子などの発現やプロモーター活性に与える影響を検討する。また、HDAC9相互作用因子として同定しているHAP1のアセチル化状態にHDAC9が与える影響を解析する。HDAC9はアミノ酸配列の類似性からクラスIIaに属す。これまでにHDACとHAP1の結合性にクラス特異性が存在する可能性を見出している。HAP1のアセチル化制御機構、HDAC9による足場非依存的増殖促進をHAP1が抑制する作用とHAP1のアセチル化の関係についてもあわせて解析する。
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Research Products
(6 results)