2015 Fiscal Year Research-status Report
新規骨分化抑制因子fad104の機能解析と骨関連疾患発症における役割の解明
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26460074
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
西塚 誠 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (00363953)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | FAD104 / STAT3 / 骨分化 / 脂肪細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨組織は常にその一部が破骨細胞により吸収され、同時にほぼ同量の新しい骨が骨芽細胞の分化により形成されることにより、恒常性が維持されている。骨分化の分子機構を解明することは、骨分化異常を原因とする疾病に対する有効な創薬開発のために極めて重要である。昨年度申請者らは、脂肪細胞分化初期に発現が増加する新規骨分化抑制因子fad104の161-277アミノ酸がSmad1との相互作用に重要であることを明らかとした。また、fad104には異なる転写開始点を有するtranscript variantが2種類存在すること、さらに、脂肪細胞分化初期に発現変化を示すのは、transcript variant 1のみであることも明らかにした。そこで本年度は、fad104による細胞内シグナル伝達制御機構について検討を行った。 Fad104は、BMP-Smadシグナルに加えて、STATシグナルも制御していることを明らかにしている。STATシグナルも骨分化に重要な役割を担うことから、fad104とSTAT3の相互作用領域とそのリン酸化制御における役割について検討した。GST-pull down assayと免疫沈降法により、fad104の1-277アミノ酸がSTAT3との相互作用に必須であることを明らかにした。また、fad104は、STAT3のSH2ドメインと転写活性化ドメインを介して相互作用することも明らかにした。さらに、FAD104の過剰発現はSTAT3のリン酸化レベルを減弱する一方で、FAD104の1-277アミノ酸を欠失した欠損変異体は、抑制できないことを見出した。以上の結果より、fad104は、1-277アミノ酸の領域を介して、STAT3のSH2ドメインと転写活性化ドメインに相互作用し、そのリン酸化レベルを抑制することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、FAD104とSTAT3の相互作用機構とfad104によるSTAT3リン酸化レベルの制御機構についていくつかの新しい知見を見出すことができた。骨分化過程におけるFAD104の役割と機構を考えるためには、FAD104がSmad1/5/8やSTAT3をはじめとした骨分化に重要な様々な細胞内シグナル伝達系をどのような機構で制御しているかについて明らかにすることが必要不可欠である。特に、FAD104は、proline rich regionやglycine rich region、さらに、fibronectin type IIIドメインといった他のタンパク質との相互作用に重要な役割を担う構造を持っている。そのため、FAD104と細胞内シグナル伝達因子との相互作用機構を明らかにできれば、その作用機序の解明につながる。本年度の検討により、FAD104が1-277アミノ酸の領域を介して、STAT3のSH2ドメインと転写活性化ドメインに相互作用し、そのリン酸化レベルを抑制することをはじめて明らかにした。本検討により明らかにされた知見は、骨細胞分化過程において、FAD104がどのような機構でSTAT3ならびにSmad1/5/8といった細胞内シグナル伝達因子と相互作用し、そのリン酸化レベルを制御するのかについてその作用機序の一端を明らかにしたものであり、概ね目標通りの進展であると考えられる。本年度得られた知見をベースに来年度以降も研究を進めることによって、骨分化過程におけるFAD104の役割と機能の全容解明につなげていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本年度新たに得た知見について、より詳細な検討を続ける。具体的には、FAD104とSTAT3ならびにSmad1/5/8との相互作用に重要と思われるFAD104のN端に存在するグリシンリッチ領域の役割を明らかにする必要がある。アミノ酸の置換などにより、相互作用に重要な領域を絞り込むとともに、その相互作用機構について明らかにしていく。また、FAD104がSmad1/5/8のどの領域と相互作用するのかについては本年度明らかにすることができなかった。そのため、Smad1/5/8の各種欠損変異体を作製し、相互作用部位を同定する。さらに、その相互作用によりどのような機構でリン酸化レベルを制御するのかについても併せて明らかにする。さらに、fad104のプロモーター領域の同定と発現制御機構の解明を進める。
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Causes of Carryover |
本年度の検討では、当初の予定よりスムーズに検討を進めることができたため、ガラス器具ならびにプラスチック器具類の支出を抑えることができた。そのため、翌年に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度以降の検討において、これまで得られた結果をさらに深く掘り下げて検討を行う必要がある、そのためには、新たに抗体やキットの購入が必要であるため、当初の予定額に加え、次年度使用額をプラスし、検討を進める。
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