2015 Fiscal Year Research-status Report
がんウイルス転写調節因子RTAによる免疫抑制サイトカインの制御機構
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26460076
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
野口 耕司 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (80291136)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ウイルス / 転写因子 / IL-10 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトがんウイルスKSHVの関連疾患に対する新規分子標的の同定を目指して、本研究課題ではKSHVウイルスによる免疫抑制性サイトカインIL-10の発現誘導メカニズムの解明を進めている。平成26年度には、IL-10遺伝子プロモーター上でのK-RTA反応性のDNA領域の決定を試みた結果、IL-10のORF上流256baseの領域にK-RTAに応答する部位があると判断された。一方、K-RTAは塩基配列特異的なDNA結合蛋白質であるが、H26年度に同定したIL-10遺伝子プロモーター領域上にはK-RTAの結合配列は認められない。そこでH27年度には、K-RTA反応領域DNAに結合する介在蛋白質の存在を推定し、検証した。K-RTAに応答するIL-10のORF上流256baseの領域には複数の他の転写因子の結合可能配列が存在するため、ミュータジェネシス法を利用してその領域内におけるK-RTA反応性DNA配列を探索したところ、特定の宿主因子が認識すると思われる配列が重要な役割を果たしていることが明らかになった。この転写因子をK-RTAと共発現させると、IL-10遺伝子プロモーターの活性化にK-RTAとの相乗効果が認められたことから、K-RTAとこの転写因子が機能的な相互作用を持っていることが示唆された。現在このK-RTA反応性のシス領域DNA に会合する他の分子の単離同定を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
K-RTAに応答するIL-10プロモーター上の特定のDNA配列が同定された。また、ここに結合すると報告されている他の転写因子がK-RTAと協調的にIL-10プロモーターの活性化を引き起こすことが初めて明らかになった。今後はこの転写因子とK-RTAとの機能的協調メカニズムの解明が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
IL-10プロモーター上でH27年度に特定された転写因子とK-RTAとの機能的協調メカニズムの解明を進める。また、IL-10の発現はHDACなどで細胞種類依存的に正または負に制御されることが知られているが、申請者の未発表データにおいてK-RTAはアセチル化されていること、HDAC阻害剤がK-RTAの転写活性を増強することが判明している。そこで、HDACによるIL-10遺伝子プロモーター上でのエピジェネティックな変化、あるいは他のHDACの活性変動がK-RTAによるIL-10発現誘導に影響を与えるのか解析し、HDACのサブタイプ選択的な阻害剤がKSHV関連病態とK-RTAによるIL-10遺伝子発現の薬物療法的コントロールに有用か検討する。このようなK-RTAによるIL-10遺伝子発現の化学制御を可能にする化合物を探索していけば、KSHV関連疾患での抑制性サイトカイン発現を抑制する分子標的薬開発に貢献すると期待される。
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