2015 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性緑膿菌のアミノ配糖体耐性阻害剤の作用機序に関する分子基盤研究
Project/Area Number |
26460080
|
Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
森田 雄二 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (00454322)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 緑膿菌 / 多剤排出ポンプ / 遺伝子改変 / アミノ配糖体 / ベルベリン誘導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑膿菌PAO1から主要な5つのRND多剤排出系遺伝子(mexAB, mexXY, mexCD-oprJ, mexEF-opN, mexVW)を欠損した株と、5つのうちmexXY/oprM遺伝子のみ保持する株、さらに両株にアミノ配糖体アセチル化酵素遺伝子aacC1を導入した株を構築し、それら4株を用いてベルベリンとアミノ配糖体系薬ゲンタマイシンの相乗効果判定(FIC)を算出した。その結果ベルベリンとゲンタマイシンは、AaaC1ではなくMexXY系を保有する株のみ相乗作用することが分かった。さらに大腸菌の主要な多剤排出系遺伝子acrBを欠損した株にプラスミド性のmexXYを導入した形質転換株と空ベクタ-を導入した形質転換株を構築した。両株のベルベリン細胞内蓄積量を比較することでMexXYのベルベリン排出活性を測定したところ、MexXYのベルベリン排出活性はアミノ配糖体系薬アミカシンによって阻害された。これはアミカシン濃度依存的であった。最後にMexXYのRNDファミリーの内膜成分MexYと同一性が51%、類似性が70%である大腸菌のAcrBの結晶構造を参考にしたMexYのホモロジーモデルでは、アミカシンとベルベリンの推定結合部位は近接していた。以上の結果からベルベリンは基質認識部位の競合によりMexYのアミカシン排出を阻害していると考えられた。 ベルベリンの誘導体XのMexXY阻害活性は、ゲンタマイシンに高度耐性を示す緑膿菌を用いることでベルベリンより薬剤感受性(MIC)で8倍程度上昇することが分かった。またベルベリンと同様、濃度依存的なMexXY阻害活性を示し、MexXY系を保有する株のみ相乗作用することが分かった。MexYのホモロジーモデルでは、誘導体Xは、ベルベリンに付加した部分がMexYに強くフィットしていた。それが誘導体Xがベルベリンより強いMexXY阻害活性を示す原因であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究の目的は、緑膿菌の主要なアミノ配糖体耐性系である多剤排出系MexXYの阻害剤開発に向けた分子基盤の確立である。今年度MexXY阻害剤のシード化合物であるベルベリンが基質認識部位の競合によりMexYのアミカシン排出を阻害することを示唆する結果が得られた。さらに競合阻害に関与するMexYのアミノ酸残基も分子モデルから推定された。さらにその近辺にベルベリンよりも強く結合すると予想されるMexXY阻害活性の亢進したベルベリン誘導体も得られた。以上のことからこの研究の目的を達成するために必要なデータが得られているので、本研究課題は順調に進展していると判断した。 ただし他のグループがMexYのアミノ配糖体耐性に関与するアミノ酸残基をいくつか報告した。これは本研究課題の目的の1つであり、この点で我々が世界をリードする機会を失ったのは残念である。
|
Strategy for Future Research Activity |
分子モデルで推定されたベルベリンとアミノ配糖体の競合に関与するMexYのアミノ酸残基やベルベリン誘導体XがベルベリンよりMexYに強くフィットするMexYアミノ酸残基が妥当であるか否か生化学的実験及び遺伝学的実験により確認する。以上により緑膿菌のMexXY依存的なアミノ配糖体耐性阻害剤の最適構造を提案する。その化合物を、可能であれば構築あるいは入手し、その化合物のMexXY阻害活性を測定する。 また新たなベルベリン誘導体及びベルベリン誘導体Xの誘導体を構築し、MexXY阻害活性を測定する。さらにアミノ配糖体耐性に関与するMexYの新規アミノ酸残基を同定する。
|
Causes of Carryover |
消耗品を購入するのに物品費を使用する予定であったが、前年度にまで購入した消耗品と他研究費で購入した消耗品でほとんどの研究を遂行することが可能であった。3月末に参加発表した学会で旅費を科研費から使用したが、事務処理上、今年度の使用分にカウントされなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度使用を控えることができた分も含めて今年度消耗品を購入する。また3年間の研究成果を学外で積極的にアピールするため旅費や論文作成などに使用する。
|
Research Products
(4 results)