2015 Fiscal Year Research-status Report
脳神経特異的新規ビタミンK2合成酵素欠損マウスを用いたビタミンKの脳機能解析
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26460085
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中川 公恵 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (90309435)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | vitamin K / UBIAD1 / MK-4 / Nestin-cre / brain |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年から継続して脳組織特異的CKOマウスを作出し、出生したマウスについて行動解析として、探索行動や危険評価行動などの情動行動が評価する新奇ケージテスト、不安様行動を測定する高架式十字迷路テスト、平衡感覚を評価する平行棒試験および水平棒試験などを実施した。その結果、いずれの試験においても行動異常が認められた。また、組織化学的解析として組織標本を作製し、神経細胞の分布状態および神経細胞ネットワークの形成状態をニューロンやアストロサイト、オリゴデンドロサイトなどに対する特異抗体で免疫染色することにより評価解析を行った。その結果、小脳に大きな構造異常が観察された。また、脳内のMK-4濃度については、脳組織部位ごとに分けてLC-APCI-MS/MSにより定量分析した結果、大脳、小脳など脳全体でMK-4濃度の顕著な低下およびMK-4合成活性の低下が認められた。ヒトにおいてはビタミンKの欠乏がアルツハイマー病やパーキンソン病のリスク要因と考えられることから、Nestin-cre Ubiad1-CKOマウスやSynapsin-cre Ubiad1-CKOマウスでは、脳内でアルツハイマー病やパーキンソン病の病変が認められる可能性がある。そこで、これら病態に関連する因子として、タウ、アミロイドβ、αシヌクレインなどの染色も行ったが、これらには大きな変化は認められなかった。 これまでの申請者の研究により、神経幹細胞はMK-4の刺激により選択的にニューロンへと分化誘導することから、UBIAD1の欠損により神経細胞分化に異常が認められる可能性は非常に高いと考えられる。そこで、細胞レベルでの解析として、胎生14日齢のマウス胎仔大脳より神経幹細胞を単離培養し、ニューロンおよびアストロサイトへの分化能を評価を行った。初代細胞でもMK-4合成能が欠損していることが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コンディショナルノックアウトマウスの作出および表現型解析は順調に進んでおり、ほぼ計画通りに進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では、平成27年度で完結できなかった内容を継続すると共に、Nestin-creによるUBIAD1のCKOマウスで、MK-4投与のレスキュー効果について検討を行う。レスキュー方法としては、胎生早期からMK-4を供給するため、雌雄マウスを交配する時点からMK-4の投与を行い、産仔についても投与を継続し、脳神経細胞特異的UBIAD1欠損に伴う異常に対する是正効果を評価解析する。しかし、MK-4の脳への移行性は現在でも全く明らかでなく、申請者らの研究によりPKやMK-nなどの投与したビタミンKのほとんどは、腸内で側鎖構造が切断されたK3に代謝されて各組織へ運ばれ、その組織内でUBIAD1によりMK-4に変換されることが明らかとなっている(Okano T, et al. JBC, 2013)のみである。脳内にMK-4そのものが移行するのであれば、MK-4投与により脳機能がレスキューされる可能性があるが、MK-4の脳移行性が低いのであれば、脳内に直接MK-4を供給しなければレスキューされないことになる。ビタミンKの脳移行性を明らかにすることは、脳におけるビタミンKの役割を解明するためにも極めて重要である。申請者らは、独自に合成したビタミンKの重水素標識化合物(ビタミンKのナフトキノン環の水素を重水素に置換した化合物)を所有しているので、これをマウスに投与することで内因的に存在するMK-4と区別して体内動態を追跡することができる。特に、Nestin-cre Ubiad1-CKOマウスは、脳内でUBIAD1によるMK-4への変換反応が起こらないと予想されるため、野生型マウスと比較することにより、投与した重水素化合物自身の脳内への到達状況とともに、脳内でのMK-4への変換状況が把握できる有効なモデル動物となる。 以上の研究により、ビタミンKの脳における機能および関連病態の解析を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
遺伝子発現レベルの解析などに要する試薬費用などを他の研究費により賄うことができたため、次年度に必要な試薬の購入に当てることとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子発現解析、受託標本作製などの費用として使用する。
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Research Products
(2 results)