2014 Fiscal Year Research-status Report
銅輸送体細胞内発現・局在制御によるメラニン合成調節機構の解明
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26460086
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
藤田 英明 長崎国際大学, 薬学部, 教授 (80291524)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 銅輸送体 / チロシナーゼ / 銅シャペロン / ユビキチン / タンパク質分解 / リソソーム / メラノソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、チロシナーゼへの銅配位およびチロシナーゼの分解に関する下記の研究が進展中である。 イヌラボシンおよびそのベンゾ誘導体化合物がマウスメラノサイトにおいて、チロシナーゼへの銅シャペロンの結合を競合的に阻害することでチロシナーゼへの銅配位を阻害していること可能性を明らかにした(Pigment Cell Melanoma Res. (2014) 27, 376-386.)。申請者らは現在、イヌラボシンおよびそのベンゾ誘導体化合物が細胞内で新規合成されたチロシナーゼタンパク質への銅シャペロンの結合を阻害するため、合成された銅を含まないチロシナーゼが不良タンパク質としてリソソームでの分解を受けているという作業仮説を提唱している。この仮説を証明する目的で、イヌラボシンがチロシナーゼ結合を阻害している新規動物細胞銅シャペロン(mCaddie)の同定を試み、プロテオミクス解析の結果候補分子の同定に成功した。現在、同定したmCaddieの機能解析を中心に研究を行っている。 愛媛大学プロテオサイエンスセンターとの共同研究により、小麦胚芽無細胞タンパク質合成系を用いたユビキチンリガーゼタンパク質アレイを用いてチロシナーゼ特異的ユビキチンリガーゼ候補分子の同定に成功した。現在、同定した膜結合型ユビキチンリガーゼの機能解析を中心に研究を行っている。 従来の美白剤はチロシナーゼの酵素活性阻害を標的にするもの、あるいはメラノサイト細胞の活性化抑制・チロシナーゼ遺伝子発現抑制を標的とするものが中心である。我々の研究成果は新規の美白剤開発・探索の理論基盤を提供するものになると考えられる。さらに本研究はこれまで知られていない細胞内における銅結合タンパク質への銅配位のメカニズムや銅ホメオスタシスの分子機構解明に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①マウスメラノサイトにおける細胞内銅輸送体(CTR1,CTR2,ATP7A, ATP7B)の発現量とメラニン合成量・チロシナーゼの安定性の相関解析(4)遅れている:メラノサイトにおける銅輸送体(CTR1,CTR2,ATP7A, ATP7B)のsiRNA/shRNAによる遺伝子ノックダウンにまだ着手できていない。 ②マウスメラノサイトにおける細胞内銅輸送体CTR1およびATP7Bの過剰発現によるメラニン合成量・チロシナーゼの安定性に及ぼす影響についての解析(3)やや遅れている:メラノサイトにおける銅輸送体CTR1の過剰発現細胞作成を試みたが、十分な発現量の安定発現細胞株が得られていない。 ③銅濃度依存的チロシナーゼ特異的ユビキチンリガーゼの同定およびその機能解析(1)当初の計画以上に進展している:小麦胚芽無細胞タンパク質合成系を用いたユビキチンリガーゼタンパク質アレイを用いてチロシナーゼ特異的ユビキチンリガーゼ候補分子の同定に成功した。 ④イヌラボシンの細胞内作用部位の特定(3)やや遅れている:蛍光標識化合物の合成を計画したがまだ着手できていない。 ⑤チロシナーゼ銅シャペロンタンパク質の同定およびその機能解析(1)当初の計画以上に進展している:イヌラボシンがチロシナーゼ結合を阻害している新規動物細胞銅シャペロン(mCaddie)の同定を試み、プロテオミクス解析の結果候補分子の同定に成功した。現在発現ベクターの構築を終えた。
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Strategy for Future Research Activity |
①マウスメラノサイトにおける細胞内銅輸送体(CTR1,CTR2,ATP7A, ATP7B)の発現量とメラニン合成量・チロシナーゼの安定性の相関解析:メラノサイトにおける銅輸送体(CTR1,CTR2,ATP7A, ATP7B)のsiRNA/shRNAあるいはCRISPAR-Cas9による遺伝子ノックダウン・ノックアウトにできるだけ早く着手する。 ②マウスメラノサイトにおける細胞内銅輸送体CTR1およびATP7Bの過剰発現によるメラニン合成量・チロシナーゼの安定性に及ぼす影響についての解析:メラノサイトにおける銅輸送体CTR1およびATP7Bの過剰発現細胞作成を引き続き行う。 ③銅濃度依存的チロシナーゼ特異的ユビキチンリガーゼの同定およびその機能解析:同定したチロシナーゼ特異的ユビキチンリガーゼをメラノサイトにおいて過剰発現させ、チロシナーゼ発現量・メラニン合成量への影響を調べる。 ④イヌラボシンの細胞内作用部位の特定:蛍光標識化合物の合成にできるだけ早く着手する。2015年度第2回JSPS(PF01)に応募して、共同研究者を本研究に参画させる。 ⑤チロシナーゼ銅シャペロンタンパク質の同定およびその機能解析:同定した新規動物細胞銅シャペロン(mCaddie)をメラノサイトにおいて過剰発現させ、チロシナーゼ発現量・メラニン合成量への影響を調べる。また、そのチロシナーゼへの結合や銅配位に必要なドメインの検索を行う。
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Causes of Carryover |
当初銅輸送体ノックダウン実験でsiRNAあるいはshRNAを購入する計画であったが、情報収集の結果、市販のCRISPA-Cas9 systemを用いたノックアウト実験の方が効果的であると思われたため、購入を見合わせた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
市販のCRISPA-Cas9 systemを用いた銅輸送体ノックアウト実験実施のための試薬を購入する。 mCaddieおよびチロシナーゼ特異的ユビキチンリガーゼについて、培養細胞(メラノサイト)レベルでの過剰発現および市販のCRISPA-Cas9 systemを用いたノックアウト実験を行う。培養細胞レベルでポジティブな結果が得られた場合、個体レベルでの機能を明らかにする目的で、ノックアウトマウス作成をRIKEN center for Life Science Technologieに依頼する計画である。
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[Journal Article] Inulavosin and its benzo-derivatives target the copper loading mechanism to the active site of tyrosinase2014
Author(s)
H. Fujita, J. C. J. M. D. S. Menezes, S. M. Santos, S. Yokota, S. P. Kamat, J. A. S. Cavaleiro, T. Motokawa, T. Kato, M. Mochizuki, T. Fujiwara, Y. Fujii, Y. Tanaka
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Journal Title
Pigment Cell Melanoma Res.
Volume: 27
Pages: 376–386
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Inulavosin and its benzo-derivatives affect on copper-loading mechanism to tyrosinase, a key enzyme of melanin synthesis in melanocytes2014
Author(s)
H. Fujita,.J.M.D.S. Menezes, S. M. Santos, S. Yokota, S. P. Kamat, J. A.S. Cavaleiro, T. Motokawa, T. Kato, M. Mochizuki, Y. Fujii and T. Fujiwara
Organizer
第22回国際色素細胞学会
Place of Presentation
Singapore
Year and Date
2014-09-05