2015 Fiscal Year Research-status Report
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26460090
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
萬谷 博 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (20321870)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 脳神経疾患 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体のタンパク質の多くは糖鎖を有しており、糖鎖はタンパク質の物理的性質や分子間の認識に大きく影響する。老化などによる細胞内代謝の変化は糖鎖修飾に影響してアミロイド前駆体タンパク質(APP)のプロセシングを変化させることが考えられる。我々はこれまでに、アルツハイマー病において糖鎖修飾がAPPの代謝に関わることを明らかにしてきた。糖タンパク質糖鎖にはアスパラギン(Asn)に結合するN型とセリンもしくはスレオニン(Ser/Thr)に結合するO型がある。タンパク質中のN型糖鎖の修飾位置はアミノ酸配列により決定されるが、O型糖鎖の修飾位置を決める仕組みはあまりわかっていない。また、O型糖鎖の構造解析はN型に比較して困難であり機能の解析もあまり進んでいない。主要なO型糖鎖であるムチン型糖鎖の合成開始酵素であるN-アセチルガラクトサミン転移酵素(ppGalNAcT, polypeptide GalNAc transferase)は約20種のアイソフォームが報告されているが、それらの機能や基質特異性の違いはあまりわかっていない。今年度、我々はアルツハイマー病患者と健常者の脳検体を用いてppGalNAcTファミリー遺伝子の発現解析を行い、アルツハイマー病の進行にともなっていくつかのppGalNAcTアイソフオームの発現が変化することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク保管の検体を用いることで、実際のアルツハイマー病患者脳における糖鎖関連遺伝子の発現解析を行っている。今回ppGalNAcTに注目し、遺伝子の発現変化をより正確に解析するため、対照群(C)、早期アルツハイマー群(eAD)、アルツハイマー群(AD)の脳灰白質検体各10例を用意し、20種のppGalNAcT全てについて、定量的リアルタイムPCRにより解析し多群検定を行った。その結果、eADからADへの病態の進行に伴って有為に発現が増加するアイソフォーム、発現に全く変化の見られないアイソフォーム、eADでのみ増加するアイソフォームがあることがわかった。今回多数の検体を解析し、各アイソフィームと病態の関連性をより明らかに示すことができたことは、今後の生化学的アプローチの有益な情報となる。
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Strategy for Future Research Activity |
アルツハイマー病患者の脳におけるppGalNAcTファミリー遺伝子変化が明らかになったことから、培養細胞を用いて各アイソフォームを強制発現しAβ産生への影響を調べる。APPあるいはセクレターゼを共発現し、各アイソフォームによるAPPやセクレターゼのO型糖鎖修飾を比較解析する。ppGalNAcTファミリーにはアイソフォーム特異的な標的タンパク質の存在が想定されるので、これらの実験によりAPPを標的とするアイソフォーム、セクレターゼを標的とするアイソフォームが明らかにできる。さらに、アイソフォーム間の協働作用などが報告されている。そこで、各アイソフォームの単独発現に加えて、複数のアイソフォームを組み合わせて発現させることでさらなる情報が得られる
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Research Products
(3 results)