2014 Fiscal Year Research-status Report
GPCRのアロステリックリガンド:細胞応答測定による親和性解析法とリガンド探索
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26460092
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須賀 比奈子 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (50261186)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | GPCR / リガンド / アロステリックリガンド / 薬理学 / 細胞内カルシウム / 細胞応答 / Gタンパク質共役受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
(A)細胞応答測定によるG蛋白質共役受容体(GPCR)のアロステリックリガンドの解析法:GPCRへのアロステリックリガンド結合に関する全ての媒介変数を推定する理論と解析法を開発することを試みている。この解析法を実証するために必要なデータを、培養細胞にGPCRを発現させて、リガンドで刺激し、細胞応答を測定することにより、収集している。この解析法が、匂いの分子(気体)をリガンドとするGPCRにも適用可能かどうか調べるため、気相液相界面培養した培養角膜細胞にGPCRを発現させ、蛍光顕微鏡を用いて細胞内カルシウム濃度上昇を測定する方法を確立した。嗅覚GPCRは、細胞内には発現するが、細胞膜にはほとんど発現せず、細胞応答が観察できなかったため、GPCRの細胞膜での発現を促進する蛋白質(receptor-transporting protein 1)を共発現させるなどして、細胞膜に発現させた。 意義:この解析法が開発されると、標識リガンドや比活性の高い標識リガンドが無い等の理由で、リガンド結合実験ができない場合でも、細胞応答測定のみで、アロステリックリガンドの親和性解析が可能になる。また、様々なシグナル系に対する作動薬の選択性(リガンドバイアス)の定量が可能になる。 (B)ムスカリンM1受容体の正及び負のアロステリックリガンド探索:私は2010年にそれまでは困難であった負のアロステリックリガンドの検出法をM1受容体を用いて開発し、報告した。本研究では、この検出法を用いて、パーキンソン病等治療のリード化合物としてM1受容体のアロステリックリガンド探索を試みた。しかし、既にメガファーマ等が先行研究していることを知ったため、別の受容体を使うことにした。 意義:本研究は、副作用や薬物耐性が軽減されたアロステリック薬による治療法開発に役立つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. 平成26年度前半はERATOプロジェクトの研究推進主任であったため、研究を行うことができなかった。また、研究協力者を訪問し、アロステリックリガンド結合に関する理論と解析法について、研究打合わせを行うことができなかった。そのため、研究は平成26年度後半のみ行い、研究打合わせは電子メールで代用した。 2. アロステリックリガンド解析法の実証実験に使用する予定であったムスカリンM1受容体安定発現細胞が、細胞保存用容器の液体窒素が全て蒸発したため、死んでしまった。そのため、他の受容体を一過性に発現させた細胞で代用したが、測定条件の設定に時間がかかった。M1、M2、及びM3受容体安定発現細胞は、1月に米国NIHの研究者より入手した。 3. パーキンソン病等治療のリード化合物としてM1受容体のアロステリックリガンドを探索する計画であったが、既にメガファーマ等が先行研究していることを知ったため、別の受容体を使うことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)細胞応答測定によるGPCRのアロステリックリガンドの解析法:研究協力者を訪問し、アロステリックリガンド結合に関する理論と解析法について、研究打合わせを行い、解析法を確立する。1月に米国NIHの研究者より入手したムスカリンM1受容体安定発現細胞を用いて、この解析法を実証する。 (B)ムスカリンM2及びM3受容体の正及び負のアロステリックリガンド探索:私が開発したアロステリックリガンド検出法を用いて、M2及びM3受容体のアロステリックリガンドを探索する。即ち、M2受容体発現細胞、及びM3受容体発現細胞を、アセチルコリンの窒素マスタード誘導体と試験化合物で処理し、マスタードでアルキル化されなかった受容体を放射標識拮抗薬[3H]NMSで測定する。アルキル化を促進する物が正の、抑制するが完全には阻害しない物が負のアロステリックリガンドである。サブタイプ特異性を調べ、高い物を探す。正のアロステリックリガンドについては、作動薬によるアレスチン動員(細胞内取り込みの指標)を低下させる物を探す。次に、最近報告されたアロステリックリガンドを結合したM2受容体の結晶構造と計算科学を用い、論理的に構造最適化を行い、更に強力な活性を持つ化合物を合成する。得られた化合物について(A)の方法で解析する。
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Causes of Carryover |
カリフォルニア大学に研究打合わせに行かなかったから。 一部のプラスチック器具や試薬などは、研究室の買い置きを使うことができたから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
カリフォルニア大学に研究打合わせに行く。 平成27年度の所属研究室は細胞培養の設備はあるが、使っている人がいないので、培養関連の試薬と器具を購入する。
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