2014 Fiscal Year Research-status Report
ミュラー細胞による神経―血管連関制御機構の解明と新規緑内障治療戦略開発への応用
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26460103
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
中原 努 北里大学, 薬学部, 准教授 (10296519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 麻美 北里大学, 薬学部, 助教 (80453504)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薬理学 / 網膜 / グリア / 血管 / 神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障は、糖尿病網膜症とともに後天性失明や視力低下の原因として大きな割合を占める社会的な問題ともなっている疾患である。本研究では、緑内障モデル(NMDA 誘発網膜神経傷害モデル)ラットの網膜において、1)神経細胞―グリア細胞―血管構成細胞間の相互作用の変化、と2)その変化に対する申請者らがこれまでに見出してきた網膜循環改善薬ならびに網膜神経保護薬の候補化合物の効果について、網膜グリア細胞の 1 つであるミュラー細胞の役割に焦点を絞り解析し、緑内障の新規予防・進行抑制戦略を提案することを目的とする。 1.先ず初めに、NMDAをラットの硝子体内に投与した後に生じるミュラー細胞の経時的な変化を特異的マーカーglutamate transporter(GLAST)およびglutamine synthetase(GS)を用いて免疫組織化学的に検討した。NMDA硝子体内投与後2日以内に、網膜の神経節細胞層および内網状層の菲薄化が生じ、続いて血管傷害が生じる。網膜の菲薄化により、ミュラー細胞長は減少したものの、GLASTおよびGS発現に顕著な変化は認められなかった。Glial fibrillary acidic protein(GFAP)発現は、NMDA処置1週間以降で大きく上昇した。 2.網膜のグルタミン酸興奮毒性に対してミュラー細胞が保護的な役割を演じており、その作用をmTOR阻害薬であるラパマイシンが増強する。本現象の機序について検討を行い、他のmTOR阻害薬であるエベロリムスでも、ラパマイシンと同様、ERK経路の活性化を介したNMDA誘発網膜傷害に対する神経保護作用が観察されること、またmTOR経路の下流分子であるS6キナーゼの阻害薬PF-4708671も、神経保護作用を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の検討により、ミュラー細胞におけるmTOR経路の抑制とERK経路亢進および神経保護作用との関連が示唆された。グルタミン酸興奮毒性に対してミュラー細胞が神経保護的な役割を担うとの報告はあるが、その機序は十分に解明されていない。本研究により、ミュラー細胞機能の調節機序が明らかにされつつある。このようにミュラー細胞による「神経―血管連関」の制御機構の一端を理解できる目処が付いたため、おおむね順調に進展しているものと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
ミュラー細胞の神経細胞に及ぼす影響についての解析は順調に進んでいるので、ミュラー細胞が直接、または神経を介して血管に及ぼす影響について解析を進め、ミュラー細胞による「神経―血管連関」の制御機構について理解が深められるようにする。ミュラー細胞が産生・遊離する保護因子の同定と神経と血管に対する効果を明らかにすることが重要である。また、mTOR経路の阻害はオートファジーを誘導することが知られているので、オートファジーの関与も検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
実験は概ね順調に進んだが、英語論文の執筆に若干の遅れが生じたため、英文校閲依頼が年度内に行えなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
英語論文の執筆を終え、英文校閲を依頼する。
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