2014 Fiscal Year Research-status Report
グルタミン酸によるヘリコバクター・ピロリ関連胃病変の発生と定着抑制機序の解明
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26460109
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
天ヶ瀬 紀久子 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (60278447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 伸一 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (90281500)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Helicobacter pylori / ヘリコバクターピロリ関連胃疾患 / グルタミン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
グルタミン酸のH. pyloriにより誘起される胃炎の抑制ならびに胃粘膜への定着阻害のメカニズムを解明し、グルタミン酸のH. pylori関連疾患への応用を目的として本研究を実施している。平成26年度は、まず、予試験から得られた結果を基に、H. pylori 感染マウスモデルの作製から開始した。 24時間絶食したICRマウスにH. pylori(TN2GF4臨床分離株)を接種し、0.5~1ヶ月後に胃炎の発生を検討した。0.5ヶ月後より肉眼的に胃炎の発生は観察され、本モデルを用いることとした。グルタミン酸のH. pylori感染前の摂取によるH. pyloriの胃粘膜への定着抑制機序を検討するため、1または5 %グルタミン酸含有飼料を事前に5日間摂食後、H. pyloriを接種した。対照群にはグルタミン酸非含有の標準食を与えた。H. pylori接種の0.5または1ヶ月後に、標準食摂食群およびグルタミン酸含有食摂食群のマウスから胃を摘出し、胃炎の程度を評価(本事業において購入した実体顕微鏡デジタル観察システムを使用)した。標準食を与えたH. pylori非感染群を用意し、H. pylori感染(標準食摂食)群と比較検討した。 その結果、1%グルタミン酸含有飼料摂食群に比較して5%グルタミン酸含有食摂食群において胃炎の顕著な改善が認められ、胃内H. pylori生菌数は標準食摂食群と比較して有意に低下していた。病理組織学的検討としてペルオキシダーゼ活性染色を行ったところ、グルタミン酸含有食摂食群では、標準食摂食群と比較して、好中球の浸潤の抑制がみとめられ、また胃粘液量の保持も認められた。今後、炎症サイトカインの発現量、細胞内シグナル伝達系の解明をさらに進め、グルタミン酸のH. pylori関連胃疾患の抑制および感染予防効果などを明らかにできるよう進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに研究はスタートしたが、その過程で、接種するH. pylori菌のロット間で、胃炎の発生にバラツキが見られた。そこで、マウスの系統とH. pylori菌のロットを調整し胃炎モデルを見直すことに時間がかかったが、現在はおおむね順調に当初の計画にそって研究は遂行している。また、入手が難しかったグルタミン酸含有飼料の準備も、現在は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
グルタミン酸前処置によるH. pyloriの定着抑制因子の探索のため、グルタミン酸処置による抗菌活性およびH. pylori運動能の検討を行う。具体的には、グルタミン酸前処置マウスの胃粘膜上皮細胞の培養上清を、H. pylori生菌を培養した選択培地に塗布し、H. pyloriに対する抗菌活性の検討を行う。またH. pylori運動能に対する影響は顕微鏡下に観察し、測定する。また感染防御に繋がる因子を推察するために、リアルタイムPCRアレイを用い、グルタミン酸含有食摂食による内因性分子の変動を探る。グルタミン酸の前処置で見られる抗H. pylori効果が、グルタミン酸後処置においても見られるかを検討する。24時間絶食したICRマウスにH. pyloriを接種し、6時間後より1または5 %グルタミン酸含有飼料を1あるいは3ヶ月間摂食させ、標準食摂食群およびグルタミン酸含有食摂食群のマウスから胃を摘出し、胃炎の程度ならびに抗菌活性、炎症性サイトカインの変動等を、前処置群の結果と比較検討していく。 平成27年度後半以降最終年度にかけて、グルタミン酸のH. pylori関連胃がんの発症に対する効果の検討をスナネズミ胃がんモデルを用いて行うための、動物モデルの準備(胃ガンモデルの作製には10ヶ月以上を要するため)も開始する。
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Causes of Carryover |
グルタミン酸含有飼料の入手に時間を要したため本年度の餌の購入量が少なくなったこと、また接種するH. pylori菌のロット間で胃炎の発生にバラツキが見られたことから、その調整に時間がかかったこと、以上の理由により、予定していた餌の購入費および動物購入費用に充てていた経費を次年度使用とする必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、申請計画書の予定通り、前年度(初年度)に購入できなかったグルタミン酸含有食および、予定していた実験計画に使用する動物購入費にあて、速やかに研究を遂行できるよう準備を整えている。
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