2014 Fiscal Year Research-status Report
炎症性および神経障害性疼痛におけるT型カルシウムチャネルとカルシニューリンの役割
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26460112
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
関口 富美子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90271410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 教授 (20177728)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / Cav3.2 T型Ca2+チャネル / 後根神経節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、炎症性および神経障害性疼痛発症に伴うCav3.2 T型カルシウムチャネルの機能および発現レベル変化の分子メカニズム解明を目的としている。H26年度は、我々がその疼痛発症にCav3.2が関与することを報告している第5腰神経切断(L5SNC)処置ラットを用いて、後根神経節(DRG)におけるCav3.2発現誘導メカニズムを詳細に検討した。その結果、L5SNC処置により痛覚過敏が発症する初期から、処置足側のL4レベルDRGにおいて、転写因子のEgr-1発現増加を伴うCav3.2タンパクの有意な増加が見られることがわかった。一方、Cav3.2の転写を抑制することが報告されているRESTの発現量は、L5SNC処置により変化しなかった。次に、Egr-1に対するsiRNAをL5SNC処置後7~9日に髄腔内投与することでDRGのEgr-1発現を低下させると、L5SNC処置による痛覚過敏およびDRGのCav3.2発現増加がともに消失した。また、Cav3.2の脱ユビキチン化に寄与し、Cav3.2のプロテアソーム分解を抑制することが報告されているUSP5はL5SNCによる痛覚過敏の持続期のL4およびL5のDRGで発現増加が見られた。以上の結果より、L5SNCによる神経障害性疼痛の発症初期には、L4レベルの知覚神経において、Egr-1の発現誘導とそれに伴うCav3.2の転写レベルでの発現増加が起こっていること、また持続期には、Egr-1に加えてUSP5の発現増加が起こることでCav3.2のプロテアソーム分解が抑制されてCav3.2の高発現が維持されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度の検討において、L5SNC処置による痛覚過敏とDRGにおけるCav3.2発現誘導に寄与する因子としてEgr-1およびUSP5が同定できたことは、本研究課題における大きな成果であると考えている。現在、切断するL5レベルではなく、L4レベルのDRGでCav3.2の明らかな発現増加が見られるメカニズムについて、NGF/TrkA受容体系およびBDNF/TrkB受容体系の関与について検討を行っており、さらに詳細なメカニズムが近々解明できると思われる。さらに、USP5に対するsiRNAの髄腔内投与による発現抑制の効果も検討中であり、現在のところ良好な結果が得られている。その結果が出た時点で、投稿論文の作成にとりかかり、2015年中に薬理学系の学術雑誌に投稿する予定である。これらの状況を考え、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度も、L5SNC処置による神経障害性疼痛モデルラットを用いて、疼痛発症メカニズムをDRGおよび脊髄のタンパクおよびmRNA発現レベルの経時的変化を詳細に検討していく予定である。また、痛覚閾値を測定しているラット後肢足底および坐骨神経において炎症を促進する白血球やマクロファージの浸潤の程度を蛍光免疫組織染色法により検討する。この検討方法は、H26年度におおむね確立しているため、問題なく検討が進むと考えている。脊髄神経切断により脱髄が起こることが神経障害性疼痛の発症に関わることが示唆されていることから、脱髄後に脱分化して増殖、活性化されると考えられている神経軸索周辺のシュワン細胞の変化についても、PCRやWestern blot法によりNGFやその受容体TrkA、Cav3.2などの発現レベルを検討するとともに、蛍光免疫組織染色法およびHE染色法により炎症性細胞の浸潤や構造変化を検討していく予定である。さらに、シュワン細胞由来細胞株を購入し、マクロファージ由来細胞株との共培養によるNGF遊離量の変化についても検討したいと考えている。これらの研究結果は、国内外の学会において発表を随時行うとともに、論文作成も進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)