2014 Fiscal Year Research-status Report
GIRKチャネル標的の独創的・画期的な難治性脳疾患治療薬の開発
Project/Area Number |
26460114
|
Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
高濱 和夫 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (80150548)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
副田 二三夫 熊本大学, その他の研究科, 助教 (10336216)
三隅 将吾 熊本大学, その他の研究科, 教授 (40264311)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | GIRKチャネル / ドパミン D1 レセプター / 抗うつ様作用 / うつ病 / ケタミン / コンデイショナルGIRK2KOマウス, / 側坐核 |
Outline of Annual Research Achievements |
CRISPR/Casシステムを用いて,作製したKcnj6 floxed/floxedマウスとDAT-Creマウスを交配させ,ドパミントランスポーターを発現しているニューロンのGIRKチャネルのGIRK2サブユニットをノックアウトしたGIRK2 DAT KOマウス(Kcnj6floxed/floxed;DATcre/+)を作製した.このマウスにおいて,腹側被蓋などにおけるGIRK2の欠損を免疫組織染色により確認した.GIRK2DAT KOマウスの行動を,うつ様行動の代表的な評価系である強制水泳試験を用いて検討した結果,正常動物にGIRKチャネル阻害作用をもつ薬物を投与した場合と同様に,無動時間の有意な短縮が観察された.なお,GIRK2DAT KOマウスに外見上の形態学的な変化や,自発運動量の有意な増加は認められなかった.以上のように,本研究において,Kcnj6floxed/floxedマウスの作製に成功し,GIRK2 DAT KOマウスの表現型解析により,ドパミンニューロンにおけるGIRK2チャネルの欠損はうつ様行動の減少を示すことが明らかとなった.この表現型は,正常動物にGIRKチャネルを抑制する中枢性鎮咳薬の投与によっても見られる.これらの成績は、中枢性鎮咳薬の抗うつ様作用に,ドパミンニューロンにおけるGIRKチャネルが関与するという我々の考えをさらに支持する. 強制水泳法や尾懸垂法で認められたチペピジンの抗うつ様作用は,ドパミンD1受容体ブロッカーにより抑制されたが,ケタミンの作用と異なり,AMPA受容体のブロッカーで抑制されなかった.このことは,チペピジンの抗うつ様作用は,チペピジンと同様に即効性を示すケタミンとは異なるメカニズムで,抗うつ様作用を発現していることを示唆する興味深い成績であり,さらに確認が必要と考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はすべて予定通り進むとは限らないので,その意味では,目標は概ね達成できたと思われる.ただし,アルツハイマー病モデルに対する作用や,anti-DAT-saporinを脳内の,側坐核の亜核(core領域)に投与し,ドパミントランスポーターを選択的に破壊したラットを用いての実験などは,例数が不足していたりなど,十分達成できていない.
|
Strategy for Future Research Activity |
GIRK2サブユニットのコンデイショナルKOマウス(GIRK2DAT KOマウス)自体が抗うつ様作用を示したので,GIRKチャネルブロック作用をもつ薬物の作用との類似性について,薬理学的手法,電気生理学的手法,神経科学的手法を用いて調べる.さらに,GIRK2サブユニットのコンデイショナルKOマウス(GIRK2DAT KOマウス)を用いて,その表現型解析をさらに進め,GIRKチャネルブロック作用をもつ薬物が様々な,難治性脳疾患モデル動物に対して示す作用について,このKOマウスが同様な作用を示すか検討する. アルツハイマー病に対する作用など,新規の作用については,作用の有無を確認するとともに,そのメカニズムについて検討を加える.
|
Causes of Carryover |
GIRK2コンデイショナル・ノックアウトマウスの作成が少し遅れたこと.さらに、ターゲットニューロトキシンのanti-DAT-saporinの注入実験において、手技の獲得に時間を要し、側坐核のcore領域以外の領域への注入実験などが実施できなかったことなどによる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
ターゲットニューロトキシンのanti-DAT-saporinを側坐核core領域への注入実験の例数を増やすとともに,core領域以外の領域への注入を行い,チペピジンの抗うつ様作用を中心とした多彩な薬理効果の発現における腹側被蓋ー側坐核core領域の関与をより秋からにする. GIRK2コンデイショナル・ノックアウトマウスを用いて,各種神経行動薬理学的試験を行い,チペピジンの多彩な薬理効果のメカニズムを追究する.
|