2015 Fiscal Year Research-status Report
昆虫病原性微生物の休眠生合成遺伝子活性化による新規創薬シーズの創出
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26460117
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅井 禎吾 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60572310)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 天然物化学 / 二次代謝物 / 休眠遺伝子 / 活性化 / 薬理活性物質 / 糸状菌 / 生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫病原性糸状菌の休眠型二次代謝物を取得するために、新たに、二次代謝活性化剤として利用可能な低分子の探索を行った。糸状菌の形態変化と二次代謝物の生産が密接に関わっていることを考慮して、菌糸の形態や生育に影響を与えることが予想される化合物群に絞り込んで探索を行った。まず、糸状菌の生育を阻害する化合物について調査した。リボソーム標的薬であるハイグロマイシンでは比較的多くの菌において、二次代謝物の生産を活性化する傾向にあった。一方、過酸化水素や抗真菌薬であるミコナゾールでは二次代謝の活性化は見られなかった。次に植物ホルモンについて検討を行った。植物ホルモンの中には酵母など真菌の形態に影響を与えることが報告されているものもあり、また、糸状菌の中には植物ホルモンを生合成するものも存在するなど、糸状菌と植物ホルモンは密接な関わりを持っているので、何らかの影響を及ぼすことが期待された。その結果、いくつかの菌である特定の植物ホルモンが二次代謝の生産を活性化していることを見いだした。一般性は確認できていないものの、新たな糸状菌二次代謝活性化剤になり得る可能性がある。今後、より詳細な検討を進めることで、多様な休眠型二次代謝物の獲得を可能にする活性化剤として用いることができるか検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、ハイグロマイシンと植物ホルモンの一種に二次代謝活性化能を見いだした。それぞれ標的分子が異なり活性化メカニズムも異なる可能性が高いため、既に確立された二次代謝活性化剤であるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤HDACを加え、それぞれ相補的に用いることができると期待される。すなわち、本研究で見い出し化合物が汎用性の高い二次代謝活性化剤となれば、休眠遺伝子をより効率よく活性化でき、多様な新規天然物の獲得に繋がることが期待される。 これまで、糸状菌の二次代謝活性化剤として有望なものはHDAC阻害剤以外には見つかっていないことからも、本研究において、その候補物質が二つ見つかったというのは、大きな進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、新しい休眠遺伝子由来の二次代謝物の生産を活性化する方法について、いくつか新しい方法の開発を行ってきた。今後は、これまでの知見をもとに、昆虫病原性糸状菌の休眠型二次代謝物を網羅的に探索し、多様な新規天然物の獲得を目指す。一つの菌に対して、3つの活性化剤条件、リボソーム標的薬剤耐性化など、複数の二次代謝活性化法を適応し、それぞれ生産が活性化された二次代謝物の取得を目指す。また、昆虫病原性糸状菌に加え、多様で特色のある天然物を獲得するために、昆虫内生糸状菌にも生物材料を拡大する。そのために、昆虫内生糸状菌の収集も行う必要がある。それらについても同様に複数の活性化法を駆使してユニークな新規天然物の獲得を目指す。得られた新規物質については、抗ウィルス活性など感染症治療薬のシーズの探索を行う予定である。
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Causes of Carryover |
二次代謝活性化剤の探索研究を重点的に行ったため、小スケールでの検討が中心となった。そのため、培養用試薬、有機実験試薬等の消耗品の消費が当初の見込みよりやや抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、これまでの成果を利用した昆虫病原性糸状菌および昆虫内生糸状菌の網羅的な探索を行うことを計画しており、消耗品の消費が増えることが予想される。その分に補填する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Use of a Biosynthetic Intermediate to Explore the Chemical Diversity of Pseudo-natural Fungal Polyketides2015
Author(s)
T. Asai*, K. Tsukada, S. Ise, N. Shirata, M. Hashimoto, I. Fujii, K. Gomi, K. Nakagawara, E. N. Kodama, Y, Oshima
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Journal Title
Nature Chem.
Volume: 7
Pages: 737-743
DOI
Peer Reviewed
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