2015 Fiscal Year Research-status Report
モルヒナン関連化合物の非麻薬性鎮痛作用に関する研究
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26460126
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Research Institution | Nihon Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
高野 文英 日本薬科大学, 薬学部, 准教授 (20236251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桜田 誓 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (30279244)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 鎮痛作用 / アルカロイド / シノメニン / モルヒナン / 神経障害性疼痛 / 麻佛散 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究は、防己黄耆湯とその構成生薬である防已の主アルカロイドのシノメニンについて抗侵害刺激作用を評価し、非麻薬性の天然由来鎮痛薬の開発に結び付ける基礎薬学的な研究である。昨年度に引き続き、防己黄耆湯および防已由来成分でモルヒナン型アルカロイドであるシノメニンについて、熱板法における再現性を評価するとともに、オピオイド拮抗薬であるナロキソンとの併用で作用が拮抗するかを実験した。その結果、防己黄耆湯もシノメニンも用量依存的に熱刺激による回避行動を有意に抑制したが、この作用はいずれもナロキソンで拮抗されず、オピオイド受容体を介さない鎮痛活性を示すことが再確認できた。当該年度はさらに、新規な神経障害性疼痛モデルを用いて防己黄耆湯、シノメニン、および新規に活性を見出した、華岡青洲処方の麻佛散について評価した。神経障害性疼痛モデルはマウスの坐骨神経を結紮して作製するSeltzerモデルであり、当該モデルを用いて防己黄耆湯、シノメニンおよび麻佛散の抗侵害刺激作用をvon Frey filamentで調べた。その結果、防己黄耆湯は有意な抑制活性を示さないが、シノメニンは30 mg/kg/dayの3日間前投与で強いフィラメント刺激回避行動閾値の上昇を認めるとともに、今回、新たに試験した麻佛散については強力、かつ有意な抑制活性が認められた。なお、当該モデルにおいて、モルヒネは有効性を示さなかった。このことは、シノメニンおよび麻佛散には神経遮断性麻酔(NLA麻酔)と類似した鎮痛作用があることを示すものであり、神経障害性疼痛に対して効果がある可能性が高いことが分かった。今後、再現性を含めて評価を進めるとともに、シノメニン以外の有効成分の単離も試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、再現性をとるための繰り返し実験の回数が多くなったため、やや遅れ気味に実験が推移した。そのため、公表論文の作成が未完であるが、当該関連の研究成果を学会に3題発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、神経障害性疼痛(Seltzer)モデルで有効性を示したシノメニンおよび麻佛散について、メカニズムを含めたさらに詳細な鎮痛活性評価を行う。すなわち、Seltzerモデルを作製したマウスにシノメニン、麻佛散を投与し、併せてオピオイド受容体拮抗薬のナロキソンを作用させて鎮痛活性への影響を調べる。さらに、坐骨神経結紮モデルを自己免疫疾患自然誘発モデルマウスに作り、炎症応答と神経障害性疼痛に及ぼす影響を調べるとともに、シノメニンおよび麻佛散がどのような作用を示すのかを検討する。さらに、麻佛散に含まれる有効成分のうち、特にアルカロイド化合物群についてHPLCを用いて精査する。
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Causes of Carryover |
当該年度の実験で薬物の再現性に関する動物実験が順調に推移ししたため、申請額に対して余裕をもって対応することができた。また、研究成果発表における学会が所属研究機関から極めて近く日帰りが可能であったため、交通費も不要となったことから、予算執行額に余分の差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
結果に応じては、動物実験や新規な実験を立ち上げる必要性も生じることから、当該年次に生じた差額は次年度予算に繰り越して使用する。
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Research Products
(4 results)