2014 Fiscal Year Research-status Report
新規アリルイソチオシアネート誘発機能性ディスペプシア動物を用いた健胃薬の薬効評価
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26460127
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
田嶋 公人 城西国際大学, 薬学部, 准教授 (60406783)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アリルイソチオシアネート / 機能性ディスペプシア / 胃粘膜微小炎症 / 胃運動 / ワサビ受容体TRPA1 / バニロイド受容体TRPV1 / 実験動物 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究は、ストレス性胃腸機能障害である機能性ディスペプシア (FD) の治療薬開発を支える病態モデル動物の開発、そして、それらを用い健胃薬などから新たな薬効価値を見出すことを最終目標としている。これまでの若手研究Bからの研究支援が実り、「ヒトFD様症状に類似した病態モデル動物」を作製する上で病態要因の1つと考えられる胃運動減弱状態をワサビ辛味成分アリルイソチオシアネート (AITC) を用いて作製するに成功した。さらに、それは臨床現場で使用されている胃腸運動改善薬で薬効評価可能であることが示された。 (1) AITCによる胃運動減弱モデルマウス :我々は、覚醒下マウスへのAITC投与は胃運動減弱を引き起こすが粘膜傷害を惹起しないことを観察した。さらに、AITC誘起胃運動減弱は、既存の胃腸運動改善薬、そして、FD治療薬アコチアミドで改善することを見出した(田嶋ら. 2014.第8回機能性ディスペプシア研究会)。 (2) FD様症状の病態成因の解析:バニロイド受容体TRPV1とワサビ受容体TRPA1発現知覚神経の異常興奮がFDなどの胃腸機能障害を引き起こすと考えられている。そのため、正常動物でのTRPV1とTRPA1による胃腸機能調節を解析した。その結果、TRPV1活性化薬カプサイシンは胃粘膜血流の増大を誘起し、その作用は初期にはTRPV1発現神経に含まれる神経型一酸化窒素合成酵素由来NOが関与し、持続相では血管内皮細胞由来NOも寄与することを見出した(Horie. et al. 2014, doi: org/10.5772/58557)。 (3) 漢方薬・大建中湯による胃機能調節:TRPV1とTRPA1活性化作用を有する生薬を含む大建中湯は、マウス胃酸分泌の調節作用およびラット胃粘膜血流の増大作用を有することを見出した (田嶋、堀江, 2015.3, 第88回日本薬理学会年会)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ワサビ辛味成分アリルイソチオシアネート (AITC) による胃運動減弱モデルマウスが薬効評価可能なモデルとして確立しつつある。しかし、「ヒト機能性ディスペプシア(FD)症状に類似したモデル動物を作製する」うえで、食欲不振や胃の適応性弛緩反応の異常を検討することがやや遅れている。一方、正常動物を用いた健胃薬および漢方薬の胃機能を高める作用メカニズムの検討は予定通り進んでるが、それらがFD様症状をも改善しうるかの評価が十分行われていないと考え、”やや遅れている”とした。
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Strategy for Future Research Activity |
ワサビ辛味成分アリルイソチオシアネート処置動物機能性ディスペプシア (FD) 様の症状を反映した病態モデル動物として確立するために今後必要な検討事項は以下2つ考えている。 (1) 食欲不振(摂食量や体重変化の検討) (2) 胃適応弛緩反応
また、FD様症状を改善する効能が期待される健胃薬や漢方薬の多くは、体温もしく局所表面温度を変化させることで胃機能を整える作用が現れることが考えられたため、今年度は研究備品として体表面温度を測定できる装置を購入することができた。今後、体温・局所表面の変化も捉えながら、FD様症状の治療薬物の候補も見つけていきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、研究課題で提案した体表面温度の測定装置一式を購入することができた。しかし、それらのデータをパソコンに出力する際に活用されるPowerLabは、急激な円高のため価格が変更になり購入を断念したためである。しかし、当初の拡張性は望めないが現在使用していない旧式PowerLabを所有していたため、それを活用し今後健胃薬や漢方薬投与時の体表面温度を測定していきたいと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究課題「新規アリルイソチオシアネート誘発機能性ディスペプシア動物を用いた健胃薬の薬効評価」を継続して遂行するため、以下の項目で使用することを考えている。 (1) 物品費:ラットやマウスなどの実験動物、および薬理学的試薬は日々の研究活動で必須である。そのため、研究経費全体の約1/2を充てる(75万円)。(2) 旅費:薬理・薬学会系の国内学会2回、消化器系の国際学会1回・国内学会2回の発表を予定している。FD様症状を反映した病態モデル動物として何が足りないか、薬理系・消化器病などの専門学会・研究会にて批判的意見を広く吸収し、次年度の研究成果に反映したいと考えている(50万円)。(3) 人件費・その他:論文の英文校正および実験補助者などへの支払いを考えている(10万円)。(4) その他:学会誌投稿料、および、論文受理後の掲載料などを想定している。(15万円)
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Research Products
(6 results)