2015 Fiscal Year Research-status Report
新規アリルイソチオシアネート誘発機能性ディスペプシア動物を用いた健胃薬の薬効評価
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26460127
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
田嶋 公人 城西国際大学, 薬学部, 准教授 (60406783)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アリルイソチオシアネート / カプサイシン / 機能性ディスペプシア / 胃粘膜微小炎症 / 実験動物 / ワサビ受容体TRPA1 / 胃運動 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究は、ストレス性胃腸機能障害である機能性ディスペプシア (FD) の治療薬開発を支える病態モデル動物の開発、そして、その病態モデルを用いて健胃薬や食素材などから新たな薬効価値を見出すことを最終目標としている。これまで (1)ヒトFD様症状に類似した病態モデル動物の第一歩となる“胃運動の減弱”をワサビ辛味成分アリルイソチオシアネート (AITC) を用いて作製するに成功した。さらに、(2) 実験動物で薬理作用が評価しづらい漢方薬・大建中湯でもAITC誘起胃腸運動減弱を改善する作用を見出し、作用機序の解析実験に着手することができた(押、田嶋ら. 2016. 日本薬学会第136年会)。大建中湯は山椒、乾姜、人参、膠飴からなる漢方薬である。山椒や乾姜(生姜)は、普段の食生活でも口にする食素材でもあり、これらで改善効果が観察されたことは大きな成果でもあった。そのため、今後、AITC誘起胃運動減弱モデルを用いて、山椒、生姜、コショウなど単独でも胃運動改善作用が認められるか検討していきたい。また、上記漢方薬および食素材による胃運動改善作用は温度感受性チャネルTRPA1およびTRPV1によってもたらされるのではないかと考えている。そのため、作用点解析で重要となる研究試薬の受容体選択性、および、局在解析(免疫組織学的解析)の研究力向上も実験動物の消化管を用いて行っている(田嶋ら. 2015. 日本神経消化器病学会 学会賞受賞)。 今後の課題として、AITC誘起胃運動の減弱動物がFD病態モデル動物として認められる病態モデル動物に展開していくことである。そのために、AITC投与動物において(1)食欲不全症状、(2)内臓知覚過敏・胃痛反応、 および、(3) 胃適応性不全の症状が現れるか精査し、新規FD治療薬の開発研究を支える病態モデル動物にしたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで (1)ヒトFD様症状に類似した病態モデル動物の第一歩となる“胃運動の減弱”をワサビ辛味成分アリルイソチオシアネート (AITC) を用いて作製するに成功した。さらに、(2) 実験動物で薬理作用が評価しづらい漢方薬大建中湯でもAITC誘起胃腸運動減弱を改善する作用を見出し、作用メカニズムの解析準備が整いつつある(押、田嶋ら. 2016. 日本薬学会第136年会) 。そのため、AITC誘起胃運動減弱モデルを用いて、まず漢方薬大建中湯の作用機序を薬理学的に解析し、そして、その研究経験をもってさらに薬効評価が難しいと予想される食素材・山椒、生姜、コショウなど単独でも胃運動改善作用が認められるか検討したいと考えている。一方、漢方薬および食素材による胃運動改善作用は、温度感受性チャネルTRPA1およびTRPV1によって引き起こされたのではないかと考えている。そのため、作用点解析で重要となる研究試薬の受容体選択性、および、局在解析(免疫組織学的解析)の研究力向上も実験動物の消化管を用いて行っている(田嶋ら. 2015. 日本神経消化器病学会 学会賞受賞)。ただ、免疫染色で使用する抗体については臓器によって反応性が大きく異なるため、現在、研究遂行において大きな壁に直面している。免疫染色手法以外でも薬理学的な実験結果をサポートできる解析手法がないか視野を広げ研究課題に取り組みたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は、ワサビ辛味成分アリルイソチオシアネート (AITC)誘起胃運動減弱動物が機能性ディスペプシア (FD)病態モデル動物として認められる病態モデルにしていくことである。2016年5月米国消化器病学会(開催都市:サンディエゴ)において、機能性胃腸機能障害の診断基準RomeⅣが10年ぶりに新しく発表された。FDも機能性胃腸機能障害の1つであるが、RomeⅢよりも臨床現場での診断基準がより明確になり、科学的根拠に基づいた診療と治療方針を患者に提供できるものになったと印象を受けた。そのため、私たちの研究展開においも臨床現場につながるトランスレーショナル研究にするために新しく発表されたRomeⅣに基づくFDの診断基準を踏まえ、AITC投与動物において(1)食欲不全症状、(2)内臓知覚過敏・胃痛反応、および、(3) 胃適応性不全の症状が現れるか精査し、新規FD治療薬の開発研究を支える病態モデル動物になるように進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
2015年度の研究費使用においてほぼ予定通りに研究を遂行することができたが、次年度へ4328円繰り越すことになった。研究費管理ノートを付けており、今年度マイナス会計で終わらせたくなかったため僅かではあるが残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度への繰越金は実験動物(マウス)の購入費などに使用させていただき、少しでも研究成果をつなげたいと考えている。
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Research Products
(23 results)