2014 Fiscal Year Research-status Report
環境応答型新規N-アルキル含ピリジルアミドの立体構造と動的機能制御
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26460154
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
岡本 巌 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (80307074)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 芳香族アミド / 立体構造変換 / フォールディング / 分子スイッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画に基づき、ピリジン環を有するN-メチルアミドのオリゴマーを合成した。これらの合成方法については、従来より確立していた方法を用いて順調に進めることができた。 以前に発表しているピリジンアミドオリゴマーは、左右対称型の分子構造をとっており、そうではないhead-to-tail型のオリゴマーを取り上げている。これは一つには、ピリジンアミドオリゴマーの単位を伸ばしたものにおける構造特性を調べるためであり、また他の目的としては、大環状オリゴマーの構造特性を調べる前段階の知見を得るためである。 ピリジン環の数を単位として、3mer、4mer、5merと長さの異なるオリゴマーの立体構造を検討した。溶液中におけるこれらの立体構造は、1H NMRによって詳細に検討できた。以前に我々が報告しているとおり、ピリジンの2位にカルボニル基を有するようなアミド化合物の場合、ピリジン環とカルボニル基との間で双極子相互作用が存在し、それによって官能基に方向性が表れる。この場合にもその傾向が強く表れており、分子の立体構造はジグザグ型を示すような構造をとっていた。 ここに酸を加えることによる立体構造変換を検討した。すると予想されたとおりに、適度な強さの酸を用いることで、オリゴマー分子における末端のピリジン環のみにプロトン化が生じ、強酸を加えた場合とは異なる状態になる。2merや3merのような短い分子では、このプロトン化によって部分的で小さな変化のみが生じる。これに対し、4merや5merのような長いオリゴマーになると、フォールディングと呼ばれる分子の折りたたみが生じることが観測された。これはオリゴマー分子が長くなって初めて表れる独特な現象である。 これらの知見は速報として学会で発表し、現在は論文投稿の準備中である。また、今後の発展が期待されるいくつかの知見も見いだしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまでは我々が確立した既存の手法を発展させているので、比較的順調に知見を得ている。 また、次年度に行う予定であった、酸添加による立体構造変換の知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、一通り鎖状のオリゴマーと大環状化合物とを合成し、その後に酸や金属に対する実験を集中して行う予定であったが、鎖状のhead-to-tail型オリゴマーを合成した後で、直ちに酸性度の変化に対する知見を得たので、そちらを先に検討することができた。 今後は大環状オリゴマーの効率的な合成方法の検討を行い、サイズ排除型クロマトグラフィーによる効率的な分離方法の確立、そして大環状アミドの立体構造および、環境応答による立体構造変換へと、その構造化学の探究を広げていく予定である。 大環状オリゴマーについては、現在までに一応の合成を達している。これにより化合物を得ることはできているが、未だ合成の効率化には至っていないため、十分な量を入手してできる分析などが、完全に行われていない。また、合成が一部成功している特定の大きさを持つ大環状化合物について、酸性度の変化によって構造を大きく変える傾向を見いだしている。この変化を結晶解析でとらえるべく、現在は条件を検討中である。今後はこれらの大環状オリゴマーに対する研究を優先的に行う予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定であった薬品が残金よりも高かった為に支出を見送り、そのために残金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度の薬品購入に充て、物品費として使用する予定。
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