2015 Fiscal Year Research-status Report
ツメガエル発達過程における化学物質の動態変化と環境毒性影響
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26460171
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐能 正剛 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 助教 (00552267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 昭彦 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任教授 (50106796)
太田 茂 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (60160503)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ツメガエル / 化学物質 / 薬物代謝酵素 / トランスポーター / アミオダロン |
Outline of Annual Research Achievements |
医療用医薬品である「抗不整脈薬アミオダロン」は、病院排水から排出される医薬品の中で最も生物に毒性影響を与える可能性があるとされている。アミオダロンを水槽中からオタマジャクシに曝露させたところ、オタマジャクシからカエルへの自然変態、尾部短縮、後肢伸長の抑制が観察された。この自然変態は甲状腺ホルモンが制御していると言われており、アミオダロンがオタマジャクシ生体において、抗甲状腺ホルモン作用を示した可能性がある。カエル甲状腺ホルモン受容体を介した作用を評価するためのレポータージーンアッセイにおいてアミオダロンを評価したところ、甲状腺ホルモンであるトリヨードサイロニンT3共添加において、アンタゴニスト活性を示した。アミオダロンをオタマジャクシに曝露後の肝臓中濃度は、水槽中曝露濃度に比べ非常に高い濃度であり、アミオダロンの生体内蓄積も毒性影響に起因しているものと考えられた。一方、仔カエル、カエル成体にもアミオダロンを曝露させたところ、オタマジャクシ肝臓より低い濃度であった。このことから、オタマジャクシ、仔カエル、成体カエルのアミオダロンの蓄積の違いは、薬物代謝酵素の発達変化が原因の一つとして考えられた。実際、肝臓中のNADPH P450reductaseやCYP3AのmRNA発現は仔カエル、成体カエルの方が高かった。オタマジャクシの自然変態の過程において、甲状腺ホルモン濃度が高くなることから、甲状腺ホルモン自身が薬物代謝酵素を制御している可能性もある。カエル由来の細胞に甲状腺ホルモンを曝露させたところ、CYP1Aの活性が上昇した。また、PXRアゴニストを曝露させるとCYP3Aの活性が上昇した。引き続き、カエル発達過程におけるアミオダロン蓄積の違いの要因を薬物代謝酵素だけでなく、トランスポーターなど吸収、分布、排泄の違いも考慮に入れて精査し、その発現メカニズムを解明していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オタマジャクシ、仔カエル、カエル成体の肝臓において発現する薬物代謝酵素の代謝活性だけでなく薬物代謝酵素やその発現を制御する核内受容体のmRNA発現量変化についても評価した。また、カエルの培養細胞を用いて、薬物代謝酵素の発現変化の鍵となる因子の探索している。その中で、アミオダロンの蓄積変化は薬物代謝酵素の発現変化だけでは説明できないデータも得られており、代謝だけでなく、吸収、分布、排泄機構の発達変化、アミオダロン自身の抗甲状腺ホルモン作用も考慮に入れる必要性があることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
代謝だけでなく、吸収、分布、排泄機構の発達変化の寄与を考察するため、排泄が代謝型で、かつ分布容積が小さいことが知られる化学物質を曝露して、その曝露量の発達変化を追跡していく。また、薬物代謝酵素の誘導剤とアミオダロンを共曝露させ、蓄積への影響をみる。さらには、オタマジャクシ、仔カエル、カエル成体にアミオダロンを曝露後の肝臓での酵素活性や遺伝子発現を評価することによって、アミオダロン自身に抗甲状腺ホルモン作用による薬物代謝酵素変動の影響も見ていく。
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Causes of Carryover |
本年度は、オタマジャクシ、仔カエル、成体カエルの肝臓中における薬物代謝酵素の遺伝子変動やその変動メカニズム解明に注力をおいたため、使用額に変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、生体を使ったin vivo研究も並行しながら進めていく予定であり、そのために必要な経費に充当する予定である。
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[Presentation] Development Changes of Drug-metabolizing Enzymes Related to Accumulation of Chemicals in Tadpoles and Adult Frogs2016
Author(s)
Seigo Sanoh, Junpei Mori, Ken-ichi T. Suzuki, Keiko Kashiwagi, Hideki Hanada, Mitsuki Shigeta, Takashi Yamamoto, Kazumi Sugihara, Shigeyuki Kitamura, Akihiko Kashiwagi, Shigeru Ohta
Organizer
International Meeting on Aquatic Model Organisms for Human Disease and Toxicology Research
Place of Presentation
Okazaki Conference Center, Okazaki, Japan
Year and Date
2016-03-18 – 2016-03-19
Int'l Joint Research / Invited
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