2015 Fiscal Year Research-status Report
一本鎖抗体VHHによる抗生物質医薬品リバイバル補助薬の開発
Project/Area Number |
26460173
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
石田 功 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (00415556)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 緑膿菌 / 一本鎖抗体 / 排出システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、緑膿菌薬剤排出システムの排出口由来の部分ペプチドを合成し、アルパカに免疫して抗ペプチドVHH抗体を取得して緑膿菌の菌体表面への結合、抗菌薬との相互作用の有無を調べることを目的としている。 平成26年度には、緑膿菌薬剤排出システム排出口(OprM)由来Loop2に結合することが確認されたVHH抗体(4P41)の3量体(in Tris buffer pH8.2)と等量の緑膿菌培養液(PBSで1000倍希釈)を混合して37℃で1時間加温後LBプレートに播くと、3量体抗体を加えたものは緑膿菌コロニーの出現が顕著に抑制されたこと、このコロニー抑制効果は、同濃度の単量体、2量体、他のVHH抗体4量体では見られなかったことを報告した。 平成27年度では、上記の抗菌作用のメカニズムについて研究を進めた結果、4P41VHH抗体の抗菌作用は、約50mM Tris(pH8.2)の存在下で見られる現象であると結論された。すなわち、4P41VHH抗体3量体が菌体の排出システム排出口に結合することで、菌外膜表面の膜流動性が低下して、Tris分子が菌体内に入り易くなって殺菌効果を示していると想像された。この抗体活性は、4P41VHH抗体3量体の50倍濃度の4P41単量体、4倍濃度の4P412量体でも見られた。4P41VHH抗体自体に抗菌作用はなく、菌体表面に結合することで菌外膜表面の膜流動性を低下させていると結論された。 この4P41VHH抗体の緑膿菌に対する作用により、他の菌外膜に作用する抗菌薬(コリスチンなど)の抗菌活性が上昇する(MIC値を低下する)可能性が考えられた。事実、4P41VHH抗体とコリスチンとの併用で、コリスチンの緑膿菌MIC値は1/4に低下した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では、緑膿菌排出システム排出口に結合するVHH抗体自体には抗菌活性はなく、菌外膜表面の膜流動性を低下させる作用がある可能性が示された。この抗体を活用する方法として、コリスチンなどのグラム陰性菌外膜に作用する抗菌薬のMIC値を低下させ、臨床における抗菌薬の毒性低減に使える可能性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
本学の研究グループ内で、ブレビバチルスの分泌発現系でVHH抗体の高生産・高純度の単離精製が可能であるとの情報を得ているので、左記方法で高純度のVHH抗体精製品を得て、平成27年度の結果の再現性を確認する。また、グラム陽性菌に効果があるがグラム陰性菌では効きにくい抗菌薬(オーラノフィンなど)と本VHH抗体の併用効果を検討したい。
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Causes of Carryover |
平成26年度の結果について、本年度に更に検討を続けた結果、これまで見ていた抗菌作用がVHH抗体自体のものではなく、菌外膜の流動性を低下させることで、トリスバッファー成分の殺菌作用を強めていたことが判明したため、高純度精製した抗体による試験が先延ばしになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の結果から、本研究で取得した抗体が、コリスチンなどの抗菌薬との併用による併用薬の抗菌作用を増大させる効果が判明し、医薬品としての有用性が出てきた。抗体の高純度精製品を使った試験を行う価値が出てきたため、今年度は、前年度出来なかった外注による抗体の高純度精製品で平成27年度の結果の再現性、およびコリスチン以外の併用抗菌薬の可能性を探る。
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Research Products
(5 results)