2015 Fiscal Year Research-status Report
白色脂肪の褐色化:RXRアゴニスト・有機スズによる制御とその機構
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26460184
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
最上 知子 国立医薬品食品衛生研究所, 生化学部, 部長 (90174333)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脂肪細胞分化 / ベージュ細胞 / RXR / 有機スズ |
Outline of Annual Research Achievements |
白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞は、それぞれエネルギー貯蔵と脂肪燃焼による熱産生の別個の役割を持ち、発生系列も異なっている。研究代表者らは、核内受容体RXRのアゴニストをマウスに投与すると、白色脂肪組織の遺伝子発現プロファイルが褐色脂肪類似に変化し、高脂肪食投与による肥満を抑制する現象を見出した。本研究では、[1]RXRアゴニストが白色脂肪を褐色脂肪様に変化するメカニズムを、褐色細胞と同様に熱産生を促進する「ベージュ細胞」への分化誘導に着目して解析し、その分子機構を明らかにする。 [2]RXRアゴニスト活性を有する内分泌攪乱物質トリブチルスズなどの有機スズ化合物が、同様に白色脂肪の褐色化を誘導する可能性の検証を行うことを目的とする。 これまでの研究において、RXR合成アゴニスト投与により肥満が抑制されたマウスの白色脂肪組織(精巣上体周囲脂肪組織)においてミトコンドリアのβ酸化系やエネルギー産生関連遺伝子、PPARαやPGC1α等の転写因子等の発現上昇を確認した。さらに精巣上体周囲脂肪組織由来の脂肪前駆細胞培養系を用い、RXR合成アゴニスト処理によるエネルギー産生関連遺伝子の発現上昇を明らかにした。H27年度は顕著なベージュ化能が報告されている皮下脂肪組織由来の脂肪前駆細胞を用いて検討を行い、培地を選択することにより、RXR合成アゴニスト処理によりベージュ細胞に特徴的な遺伝子発現の上昇が認められることを明らかにした。また、有機スズ化合物の各種核内受容体のRXRヘテロダイマー活性化/抑制能をレポーターアッセイにより測定し、RXRアゴニスト/アンタゴニスト活性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RXRアゴニストによる肥満抑制のメカニズム解明のために、マウス精巣上体周囲白色脂肪ならびに同組織由来の脂肪前駆細胞培養系に加え、今年度はより顕著なベージュ化が報告されている皮下脂肪組織由来の脂肪前駆細胞を用いての検討を行い、RXR合成アゴニストによるベージュ細胞関連遺伝子の発現促進を明らかにした。詳細な分子メカニズムの解明には、初代培養系ではなく適切な培養細胞を見いだす必要が判明した。一方、有機スズ化合物のRXRアゴニスト/アンタゴニスト活性評価を行い、概ね計画は順調に進行していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きRXRアゴニスト処理による遺伝子発現の解析を進め、ベージュ化関連遺伝子発現に決定的な因子を推定し、その役割をsiRNAノックダウン・過剰発現などにより検証する。さらにその転写制御機構を明らかにする予定である。また有機スズ化合物の作用を評価し、生体影響ならびに環境影響評価の基盤とする。
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Causes of Carryover |
有機スズ化合物の活性評価にあたり、今年度はRXRアゴニスト活性評価を先行して行った。高額な脂肪前駆細胞を用いた検討の主要部分は次年度に変更したため、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、本年度に繰り越した脂肪前駆細胞の購入に充てるほか、当該実験の性質ならびに研究の進展から試薬等に多くの出費が予測されることから、物品費として使用する予定である。
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