2014 Fiscal Year Research-status Report
低濃度メチル水銀の胎児期曝露における神経症状誘発因子に関する研究
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26460187
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
藤村 成剛 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部, 室長 (20416564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼杵 扶佐子 国立水俣病総合研究センター, 臨床部, 部長 (50185013)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 胎児期曝露 / メチル水銀 / 神経症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、これまで解明されていない低濃度メチル水銀の胎児期曝露における神経症状誘発因子を明らかにし、メチル水銀中毒の診断、予防および治療において有益な情報を得ることである。そのために低濃度メチル水銀 (5 ppm飲水) の胎児期曝露によって神経病変 (神経細胞死およびグリオーシス等の一般的な神経病変) を誘発せずに神経症状を呈する動物モデルを用いて、脳内の各種mRNAおよび蛋白質量の変動を解析し、低濃度メチル水銀曝露における神経症状誘発因子を明らかにする。 本年度は、低濃度メチル水銀胎児期曝露における神経行動解析および組織化学解析を行った。出生後から成体期 (出生後36日) の間、継時的な神経症状観察 (立ち直り反射および断崖回避等の反射成熟指標) を行った結果、低濃度メチル水銀曝露 (5 ppm 飲水曝露) が、出生後11日から17日までの間のnegative geotaxis reflaxes (背地走性) 行動獲得を遅延させることが明らかになった。また、成体期の神経行動解析において、協調運動不全が観察された。次に、神経病変解析を行った結果、低濃度メチル水銀の胎児期曝露によって授乳期から成体期の間に神経病変は観察されなかったが、成体期の小脳においてシナプス構成蛋白質 (Synaptophysin) の発現低下が観察された。以上の結果は、低濃度メチル水銀曝露が脳神経系 (特に小脳) の発達遅延による神経行動異常を引き起こしていることを示唆するものである。 さらに、昨年までの培養神経細胞モデルを用いた研究結果について学会発表および論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、継時的な神経症状観察によって、低濃度メチル水銀の胎児期曝露がnegative geotaxis reflaxes (背地走性) 行動獲得の遅延および成体期の協調運動不全を引き起こすことを明らかにした。さらにこれらの神経行動の責任病巣である小脳について組織化学解析を行った結果、神経病変は観察されなかったが、成体期の小脳においてシナプス構成蛋白質 (Synaptophysin) の発現低下が観察された。 以上の結果は、低濃度メチル水銀曝露が神経病変 (神経細胞死およびグリオーシス等の一般的な神経病変) を誘発しなくても、脳神経系 (特に小脳) の発達遅延による神経行動異常を引き起こしていることを示唆するものである。本年度の目標は、低濃度メチル水銀曝露による神経行動解析および組織化学解析であることから、本年度は一定の研究目標を達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの検討によって、低濃度メチル水銀の胎児期曝露が、脳神経系 (特に小脳) の発達遅延による神経行動異常を引き起こしていることを示唆するデータを得ている。 今後は交付申請書の「研究計画」にあるように“低濃度メチル水銀胎児期曝露における遺伝子および蛋白質発現解析”によるシナプス形成因子 (elongation factor, Rho等の神経突起形成およびシナプス形成に関与する因子) の解析によって、神経症状を誘発する因子について解析を行う。候補因子が推定できた後、培養神経細胞モデルにおいて発現ベクターおよびsiRNAを用いた解析を用いた“神経症状誘発を誘発する候補因子についての機能解析”を行う。 候補因子の増減によってシナプス形成能等に影響が認められれば、その候補因子が低濃度メチル水銀の標的であることが明らかになる。
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Causes of Carryover |
本年度はほぼ計画通りに予算を消化できたが、物品費の一部が予想より安価であったため、若干の次年度使用額(49,444円) が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(49,444円) は、物品購入費に充てる。
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