2015 Fiscal Year Research-status Report
タクロリムス血中濃度測定に加えCYP3A5遺伝子多型解析を行う意味はあるのか?
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26460189
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
新岡 丈典 秋田大学, 医学部, 講師 (20722276)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タクロリムス / エベロリムス / イトラコナゾール / 薬物動態学的相互作用 / 腎移植 / 膠原病 / CYP3A5遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究成果を以下の学会およびジャーナルに報告した。 【学会】1.日本薬学会第135年会、2.第58回日本腎臓学会学術総会、3.第51回日本移植学会総会、4.日本医療薬学会第25回年会 【ジャーナル】1.Xenobiotica, 45, 1147-1153、2. Eur. J. Clin. Pharmacol., 71, 1091-1097、3.Int. J. Urol., 17, [Epub ahead of print] 【研究成果】タクロリムス(FK)は膠原病患者に対する免疫薬物療法として広く用いられる。ループス腎炎患者を対象に、FK投与設計におけるCYP3A5遺伝子多型情報の有用性について検討した。急性腎障害発現群のFK投与12時間後の血中濃度(C12h)中央値は、非発現群と比較し有意に高かった(6.6 vs. 2.8ng/mL、カットオフ値:5.2ng/mL 、P=0.001)。また、CYP3A5*3/*3患者群のC12hの中央値は、CYP3A5*1アレル保有患者群と比較し有意に高かった(4.6 vs. 2.5ng/mL、P=0.002)。FK投与期間中にイトラコナゾール(ITCZ)が投与された患者においては、併用後のC12hが有意に増加し(P<0.001)、C12hが5.2ng/mL(カットオフ値)以上に達する症例は、CYP3A5*3/*3群のみに認められた。加えて、ITCZ併用前後におけるeGFR減少率は、併用後におけるC12hと有意な相関関係を示した(r=0.482、P=0.009)。これらの結果から、CYP3A5遺伝子多型は、FK薬物療法が施行されている膠原病患者の急性腎機能障害発現を予測するバイオマカーとして有用と考えられる。 一方、腎移植患者におけるFKの体内動態は、CYP3A5遺伝子多型に関係なく、エベロリムスの併用により影響を受けないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アゾール系抗真菌薬併用時におけるFKの血中濃度上昇率は患者間で大きく異なるが、その個体差については明らかにされていない。H27年度は、FKの投与設計におけるCYP3A5遺伝子多型解析の有用性について、薬物動態学的相互作用に及ぼすCYP3A5遺伝子多型の影響に関する研究を中心に行った。 研究実績の概要にも記載した通り、膠原病患者を対象に実施したFKとITCZとの薬物動態学的相互作用研究においては、CYP3A5*3/*3群で、ITCZ併用後のFK血中濃度が高値を示し、FK血中濃度の上昇に伴い、急性腎機能障害の発現するリスクが高まることが明らかとなった。また、骨髄移植患者を対象に実施他したFK(タクロリムス1日1回投与製剤:FK-QD)とフルコナゾール(FLCZ)との薬物動態学的相互作用研究においても、CYP3A5*3/*3群ではFLCZ併用後にFK血中濃度が高値を示すことが明らかとなり、膠原病患者を対象とした研究結果と同様に、FK血中濃度の上昇に伴い急性腎機能障害の発現リスクが上昇した。これらの結果については、20th Congress of European Hematology Association(2015, June, Vienna)で報告し、現在, 英文雑誌に投稿中である。 以上のことから、申請時に立案した研究計画は予定通り進行しており、これまで報告されていない新たな情報/成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度である本年においては、FKの薬物動態に加え、薬力学(効果および副作用)に及ぼすCYP3A5遺伝子多型の影響について検討を行う予定である。 当院においてFK-QDが投与された腎移植患者のデータに基づき、術後1年以内に拒絶反応が発現した患者のリスク要因として、FK-QDの薬物動態およびCYP3A5遺伝子多型がどの程度影響を及ぼしているのか検討する。FK-QDの薬物動態の指標として検討するパラメータは、トラフ濃度や血中濃度-時間曲線下面積に加え、術後1年間のトラフ濃度変動係数に注目し解析を進める。加えて、術後1年目における血清クレアチニン値(腎機能障害)に及ぼす影響要因についても検討する。 これまで、CYP3A5遺伝子多型がFKの体内動態に影響を及ぼすことは、多くの研究で証明されているが、FKの効果および副作用にどの程度影響を及ぼすかについては明らかにされていない。近年、Meta解析により、FK1日2回投与製剤使用腎移植患者における術後の拒絶反応発現および腎機能障害発現に、CYP3A5遺伝子多型が影響を及ぼしていることが明らかとなったが、FK-QD使用腎移植患者の拒絶反応や副作用の発現に、CYP3A5遺伝子多型の影響がどの程度認められるか、現時点においては明らかとなっていない。 本研究のメインテーマである、FKのTDM実施下におけるCYP3A5遺伝子多型解析の有用性について明確に証明できるよう、申請時における計画通り、研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究は概ね順調に進行しており、差額も僅かである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
申請時の計画通り、今年度も研究を進めていく予定である。
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[Presentation] Influence of CYP3A5 gene polymorphisms on pharmacokinetics of tacrolimus modified-release once-daily after hematopoietic stem cell transplantation.2015
Author(s)
Takaya Yamashita, Naohito Fujishima, Masatomo Miura, Takenori Niioka, Maiko Abumiya, Kazuaki Teshima, Kumi Ubukawa, Miho Nara, Masumi Fujishima, Yoshihiro Kameoka, Makoto Hirokawa, Naoto Takahashi
Organizer
20th Congress of European Hematology Association
Place of Presentation
Vienna
Year and Date
2015-06-11 – 2015-06-14
Int'l Joint Research
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