2016 Fiscal Year Research-status Report
タクロリムス血中濃度測定に加えCYP3A5遺伝子多型解析を行う意味はあるのか?
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26460189
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
新岡 丈典 秋田大学, 医学部, 講師 (20722276)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | タクロリムス / CYP3A5遺伝子多型 / 腎移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎移植術後における有害事象発現に影響及ぼす要因を明らかにするため、以下の検討を行った。 術後1年目における拒絶反応発現率および血清クレアチニン値(SCr)を評価項目とし、これらに及ぼす、CYP3A5遺伝子多型(CYP3A5*1アレル保有者群 vs. *3/*3群)、性別、年齢、体重、タクロリムス(Tac)製剤(1日2回製剤:Tac-BID vs. 1日1回製剤:Tac-QD)、Tacトラフ濃度(C0)、および、移植後1年間の投与量(D)で補正したC0(C0/D)の月間変動(%CV=平均値/S.D.)の影響について解析を行った。 多変量解析の結果、拒絶反応発現に影響を及ぼす要因として独立性が認められたのは、Tac製剤、CYP3A5遺伝子多型、および%CVだった。特に%CVの寄与率が大きかった(オッズ比:1.028、P = 0.033)。一方、SCrに影響を及ぼす要因は特定されなかった。Tac-BIDおよびTac-QD服用患者群において、CYP3A5遺伝子多型間で%CVに有意差は認められなかったが、CYP3A5*1アレル保有者群の%CVは、Tac-BID服用患者群と比較し、Tac-QD服用患者群で有意に小さかった(23.3% vs. 20.4%、P = 0.003)。 これまでの検討において、我々は、Tac-QD服用患者のC0/Dは、Tac-BID服用患者と比較し、CYP3A5遺伝子多型間で、より明確な差が認められることを明らかにしている。したがって、Tac-QDのCYP3A5遺伝子多型に基づく個別化投与設計は、目標域にC0を迅速に到達させるための有用な戦略になり得ると考えられる。かつ、本年度の研究結果から、Tac-QD服用患者のC0は、目標域に到達後、特にCYP3A5*1アレル保有者において、安定して推移することが明らかとなり、本戦略の更なる有用性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は本研究期間の最終年度にあたるが、課題の最終達成目標の1つである、腎移植患者の拒絶反応に及ぼすCYP3A5遺伝子多型の影響について、明らかにすることができた(Niioka T, et al., Clin Exp Nephrol. 2017, doi: 10.1007/s10157-016-1375-4.)。 また、もう1つの最終達成目標である、骨髄移植患者におけるタクロリムスの薬物動態学的相互作用に及ぼすCYP3A5遺伝子多型の影響についても、平成27年度の報告書に記載した通り、アゾール系抗真菌薬併用時においては、CYP3A5*3/*3患者群で、タクロリムスの血中濃度の著しい上昇を認めることを論文報告している。 本研究のメインテーマである「タクロリムス血中濃度測定に加えCYP3A5遺伝子多型解析を行う意味」に関して総括すると、CYP3A5遺伝子多型情報は、① 初期投与量の個別化において有用である、② 1日1回製剤使用時の投与量個別化において特に有用である、③ 小腸における吸収(バイオアベイラビリティ)の指標となり得る、④ 薬物動態学的相互作用の強弱を予測するうえで有用である、⑤ 腎移植患者の急性拒絶反応発現や骨髄移植患者の急性腎機能障害発現の予測因子として有用である、以上の臨床的意義を有することが示唆された。したがって、申請時に立案した研究計画は概ね達成され、多くの研究成果を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
未発表状態にある、腎移植患者におけるタクロリムス以外の免疫抑制薬の体内動態解析に関しては、既に結果が判明している検討事項もあり、現在、学会発表に向けて準備を進めている。また、骨髄移植患者のタクロリムス点滴静注時における体内動態解析に関しては、適正な統計解析を実施するうえで、更なる症例数の蓄積が必要と判断し、本検討項目に関し研究を継続することとした。したがって、研究期間の延長を申請した(承認済み)。本年度内に未達成の研究課題の成果を発表する予定である。以上のことから、全ての研究課題は、本研究期間内に達成できると考えている。 これまでの研究成果は、免疫抑制薬物療法の適正化を推進するうえで、薬物動態関連遺伝子多型解析の臨床応用の可能性を示唆するエビデンスになり得ると考えられる。今後、免疫抑制薬物療法以外の領域においても、薬物動態関連遺伝子多型解析の有用性について明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究課題の一部について、成果未発表および継続中の項目が生じたため、これらを完遂するため研究期間延長を申請した。 【成果未発表項目】腎移植患者におけるタクロリムス以外の免疫抑制薬の体内動態および効果/副作用解析 【研究継続項目】骨髄移植患者のタクロリムス点滴静注時における体内動態解析
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
【成果未発表項目】腎移植患者におけるタクロリムス以外の免疫抑制薬の体内動態および効果/副作用解析に関する、学会発表に要する旅費、および、論文作成における英文校正費として使用予定。 【研究継続項目】骨髄移植患者のタクロリムス点滴静注時における体内動態解析に関する、患者の遺伝子解析に要する消耗品費として使用予定。
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Research Products
(7 results)